「荷物は、あとで」


ひとしきり、言い合いも済んだ



日常茶飯事

そして、さよならと、引越し


マンションの鍵を置いて、

部屋を出る。



当分ホテル暮らしなのか、

友人に居候。




でも、なぜだろう


エレベーターで毎回思う。


いつも、なんとなく、


不満や疲れや、彼女に言いたいことを


マンションのエレベーターにおいてきたように





旅行鞄分の荷物と後悔も、


マンションのエレベーターは

運んで、送り出してくれた。




「1階です」


優しくも、愛想のない、女性の声

機械の女性の声


「言われなくても分ってる。でも、それが、大事なのか?」



ガラガラ迷惑な音


一度あけたらもうあけられない

この扉の向こうに、僕はそう思いながら扉を開けて出た。





「言いたいことを、どこかに置いてきちゃ、駄目なんだ。」



空を見上げ、38にして、なんとなく、

次はちゃんと、言いたいことを言える様に

なろうと思った。