ざざざ・・・ざざぁ・・・
窓の外で、夜の暗闇に風が木々を鳴かせている。

そうだ、この感じは、高校生のころに夜中に日記を書いていた、あの感じだ。

不安でありながら、闇の中で心情の吐露を書き連ねる安心とが入り混じった。

音が吸われていく。どこかに吸われていく。

背後に、虚空がのしかかる。布団に横たわれば、入ってきた外が、体を布団の奥へと押し沈める。

赤い。常夜灯に。そこまで行けば。この隔たりは何か。

とろけるように。

あの頃と同じように、新聞配達のバイクが、夜明け前の空気に響かせる。音。

20年ぶりの、この感じ。




他人事でしかない。
本当に、波は来たのか。地面は、そんなにも揺れたのか。不穏な粉末は、大気に舞っているのか。



それでも、20年以上を経て、この、嗚呼、外が、体に入ってくる。


正義とは何か。
涙が流れる。それは、正義なのか。義憤なのか。不安なのか。後悔なのか。怒りなのか。自戒なのか。ただ、昂りなのか。いや逃げる口実か。逃走の渦へと絡め取られる足か。


首が傾く。指が固くなる。肩を左右非対象に怒らせ、背を丸め、まるで搾り出すかのようにピアノを弾くように。



記述は、固着させるのか。
徐々に、酒が回る。気づけば陽。いつものことだった。
安穏とした。不安であることに慣れれば、安穏とした。打刻されない。流れに。時間は。

打つべき点は、そこなのか。
何処へ、打ち下ろすのか。何処は、あるのか。


舞い上がった空から、降りて、体に体を戻すまでに、苦労した夜。何度も。
降りるぞ、戻るぞ、強く念じ、体を固くし、意思で体を押し下げ、布団に横たわる体に戻す。
そうやって、何度も空を飛んだ。

眼下に広漠とする、見慣れた街の鳥瞰。

すり鉢の底で、赤い提灯明かりに浮かぶ、夏祭りの櫓。
読み取れなかった表札。もしくは、俺の名前だったのか。

そして飛ぶ。
豪雨に打たれながら走り、気づけば雨がやみ、そして飛ぶ。

上と、前には白く限りなく遮る白い壁。
何処へ。

まるで麻痺したかのように動かない、布団の上の天井の上の浮かぶ体を、えいっと押し下げ、体に戻す。
あまりの困難に、このままもう体に戻れない不安。
だから、眠ることは恐ろしかった。


そのまま行けば、何が網膜に。
その先に、何があったのか。


在ることは、なにを求めるのか。
なぜ、在ることを考えるのか。石の様では、駄目なのか。
朝が解決するのか。


正義とは何か。
意味することは、意味されるものから逃れられず、矛盾した連関の中で、不覚の反撃に。


大きく息を付き、沈む。

何が、明日を迎えるか。
ここで、留まって。ここで、打刻。深く打ち込んで、止める。