思うことは山ほどある。

躊躇も、不満も、不安もある。

どこかで納得もしていない、割り切れないものがある。

耳元で、本当にそれでいいのかと、常に誰かが囁く。

過去に未練は無いかと、もう一人の自分が腕をつかむ。

父は言う。いつか見た笑顔を、お前は振り切ることが出来るのか。


そして、この自分自身が問う。
あせる必要など何があろうかと。


私は私の目を見つめることが出来ない。


私は、臆病だ。
私は、卑怯だ。
私は、裏切り者だ。
私は、逃げることと自己批判に酔い、いつも自分を正当化してきた。


人は皆、一人で生まれ、一人で死んでいく。
人は皆、孤独だ。


雨上がりの夜の街に、ネオンが光る。
群がる蛾の群れに、人は美しさなど見出さない。


蛾は皆、一匹で生まれ、一匹で死んでいく。
人は皆、そんな蛾などに振り向かない。



それでいいし、そうとしかならないし、そうとしか言えない。


人は皆、つまらない人生を生きていく。
人は皆、背中越しに振り返りながら生きていく。
人は皆、目を伏せて生きていく。

薄汚く、湿ったネオンに、群がる、蛾のように、生きていく。

死んでいく。





それでも、人生には意味がある。




遠く
彼方へと続く
草萌える野辺に
横たわり
風にあらわれ
そっと目を閉じる。

無限の空に
草波の音が
広がる。

世界へ沈む
心地よさを想い
そっと目を開ければ
彼方へと抜ける
光が
無限の大地を乗せて
無限の空を乗せて
私を包む。


私には、帰るべき場所が必要だ。

再婚しようと思います。
あなたの目を見つめたときの自分の心を、私は信じる。