まあ、生き地獄って言うのも大げさですけどね。

でも生きた心地しませんでしたよ。雪道をノーマルタイヤで走ったことのある人なら分かると思いますけど。


【関が原~彦根】
関が原で降りはじめた雪は積もるまでの状況でもなく、また車がほどほど通るからなのか、路面も凍結してはいない様子。信号待ちの時に、なんどもドアを開けて地面を触って確認してしまいましたよ。けっこう暖かい。これなら行けそうです。

・・・いや、それはどうかな。米原が近づくにしたがってどんどん雪が強くなっていく。
でもね、慎重に走ればこのくらいはノーマルタイヤでも行けますよ。もっとも、私の車のタイヤはノーマルである上にスポーツ寄りなトレッドパターンなので、いっそう滑りやすいのですが、それでも初心者運転じゃあるまいし、このくらいは平気でしょう。

でもって、なんとか米原をクリアし、彦根にとうちゃくぅ~。調子に乗って琵琶湖沿いに出てみました。はじめて琵琶湖って見ました。夜なのでよく見えないけれど、でかいことだけはわかる。これはなんというか、湖ではなくてすでに海ですね。だって、かなり立派な波が押し寄せていますよ。

と、のんきな事を言っておりますが、琵琶湖畔に出た途端、物凄い勢いで雪が降ってきました。これってすでに吹雪に近いように感じるのは、東京育ちの私だけ?馬鹿でかいフワフワの雪の塊が、バンバン吹き付けてきます。路面にも薄っすら雪が積もり始めました。

琵琶湖見学も早々に車に戻ってきたのですが、ふと見ると・・・おおお!初めて見たぞ!マツダのオート三輪!私の車よりもさらに年寄りの車で、名前の通り前輪が一つの三輪のトラックです。いやあ、いいもの見させていただきました。

さて、ヤバイことになる前に、さっさと行きますかね。
でもさ、彦根まできたら見たいじゃんねぇ、彦根城・・・。
お城好きなんだし。

悪魔の囁きが私を誘う。愚かなアチキは、もちろん彦根城に向かってゴー!ところが、市街地の方が車が少ないのか、完全に路面に雪が積もった状態になってしまっています。

これはヤバイ。
すでに車が真っ直ぐ走らなくなってきました。ちょっと雑なアクセルの踏み方やハンドルの切り方をすると、車が横向きになろうとします。しかも彦根城がどこにあるのかわからなくなって、ウロウロする始末。だめだ、これ以上ここに留まるのは危険。
しかしチョットばかり慌てていた私は、大変なことを忘れていました。そう、ここは彦根の市街地で、これから近江八幡あたりまでは人家もまばらな丘陵地を走らなければならいのです。つまり、当然雪が強くなり、かつ「坂道」だということです。

恐ろしい事態は、彦根の市外を出る前にすでに起きてしまいました。

近江鉄道を越えるための大きく長い陸橋に差し掛かった時です。
急な上り坂で大きくスリップし、車が真横になってしまいました。あわててアクセルOFF。反対にハンドルを切ると一気に車が逆方向の真横まで降り戻されます。これを2回くらい繰り返して、反対車線にまたがるようにして車は停車。幸い対向車がすんなり避けて走ってくれたので、この時点ではまず事なきを得ました。

問題はここからです。
上り坂で停車してしまいました。慣性で一気に上りきることは、もう出来ません。雪の坂道で最も面倒な「発進」をしなければなりません。
後続車が距離を置いて私の発進を待っていますが、そんなことで焦っても仕方ありません。ハザードランプを点灯させ、後続の車にペコリとお詫びのお辞儀をします。そして落ち着いて軽くアクセルを吹かし、少しづつ微妙にクラッチをつないでいきます。
私のセリカはFR(後輪で進む、今の車は前輪で進むのが普通)の車。しかも改造してあり、古いとは言っても今時のちょっとしたスポーツカー並のパワーがあります。タイヤもブロックパターンが大きいスポーティなタイヤですから、雪面でのグリップは絶望的です。雪道を走る状況としては最悪のケース。

慎重に半クラッチでトルクを掛けていくと、後輪が空転をしつつも車体は少しづつ前に進みます。なんてラッキーなんでしょう、無事発進に成功しました。
しかし油断大敵。車は前進していますが、ハンドルは真っ直ぐになっていません。つまり後輪がスリップしていて車がナナメになった状態で進んでいるということです。少しでも雑な操縦をするとあっという間にまたスピンです。断続的にアクセルを緩めたりクラッチを切り気味にしたりしながら、ジリジリと坂道を登っていきます。

距離にすれば僅か100メートルかそこらでしょう。でも、本当に長い長い100メートルです。
そしてやっと陸橋の最高地点に到達した時は、本当に体中から力の抜ける思いでしたよ。なんというか、今までの車の運転で培ったアクセルワークの技術を総動員したような気がします。

さて、ゆっくりと陸橋の残り半分の下り坂をおりますて、下りきったところで信号でストップ。しかし、目の前に続く状況を見て気が遠くなりそうでした。信号の先は、深々と降りしきる雪にかすむ彼方までの上り坂です。
でも、さっきの陸橋よりは雪が少なく、交通量が程々あるのかワダチになる部分は雪が解けかかっています。
そして青信号で発進。1速で時速20キロ。這うようなスピードで進んでいきます。なんとか上っていますが、怖いのは赤信号です。

止まったら終わる。

そう言い聞かせながら祈るように走ったところ、意外と祈りは通じるもののようで、雪が消えはじめる地点まで赤信号ゼロのノーストップでした。いやあ、これも日々の行いが良いからなのでしょう。

もう安心、というところまできた時に吸った煙草の美味いこと。至福の一時。
ていうか、そもそもスタッドレスタイヤはいてこいよ、って感じですが・・・


ということで、もう疲れた。また続きは明日。明日は京都でのお話しになります。

ではでは。