2点差。
一発勝負のトーナメントでは、非常に厳しい点差である。
圧倒的にボールを支配し、名古屋の5倍のシュートを打ちながら、点が入らない。
どうすれば・・・
誰もが、変化が必要だと頭によぎる。
守りとのバランスを考え直すか。
攻め方に変化をつけるか。
近藤 「このままでおっけー」
試合開始から、まったく表情を変えない近藤を、大阪の選手が振り返った。
近藤 「ガチガチに守りよるけど、崩せてる。シュートまでいってるし、ほとんど枠に飛んでる。」
「点は、取れるで」
問題ない。
近藤がそういうなら、大丈夫だ。
大阪の選手に迷いは消えた。
2点取られたら、3点取って勝つ。
守る代わりに攻め倒す。
試合終了まで、攻めて攻めて攻め倒す。
それが大阪の戦術だ。
後半残り5分、キックオフと同時に、先ほどと同じくCB2人を残し大阪はどんどん攻め上がる。
たいした精神力だな
リオは、2度も食らったカウンターに萎縮しない大阪に、敵ながら賞賛した。
その後ろ、GK奈良沢は、危機感に苛まれていた。
ここまで止めてはいるが、同じ状況でまた止められるとは限らない。
何度も、完全に崩されている。
いま同点でも、3-2で負けていても、何の不思議もないゲームだ。
8人で守ってるのに、だぞ?
名古屋は全員、同じ気持ちだった。
奈良沢のビッグセーブがなければ、同点かリードされているか、少なくとも2点差という実力差はまったく感じない。
この攻撃も、どこで、誰が、いつ、誰に、ラストパスを送るのか。
わかっていても、固めていても、大阪は通してくる。
近藤か、二海か。
何度も崩された恐怖に、ラインは緊張する。
突然、スルーパスがラインを切り裂く。
何人もの大阪アタッカーがラインの裏を破る。
2点差とはいえ、1つやられれば1点差。
チャンスの数で勝る大阪相手に、1点差は恐ろしい。
DFラインの手前、中央で二海がボールを持つ。
顔を上げてラインを見据える。
5枚のDFライン、その前の3枚のハーフ陣も、裏を取られる恐怖に取り憑かれていた。
その恐怖は、パスコースを消す以外、ボールホルダーをチェックするという意識を消し去っていた。
二海は、左足、つまり逆足で思いっきりボールの真芯を叩いた。
フォロースルーで体が浮くほどのスイングで。
ボールは、真芯を食ったときの独特の、空気の壁を避けるような唐突な曲がり方でアウトへ、そして落ちながら名古屋ゴールの左隅を襲った。
奈良沢は反応し、左腕を伸ばすが、まったく届かない。
ボールスピード、コース、曲がる方向、誰も打つとは思わない唐突なタイミング。
止めるのは不可能といえるミドルシュートが、名古屋ゴールに突き刺さった。
大阪選手は、祝福と歓喜で二海を囲む。
無言でニヤリとした笑顔を作りながら自陣へ戻る二海。
45分で1点差なら、まったく問題ない
大阪の誰もがそう思うと同時に、名古屋の誰もが考えた。
残り45分をゼロに抑えるのは、非現実的だ。
点が要る。
そして1-2のまま、前半が終了した。
ポゼッション 75:25
シュート数 11:2
枠内シュート 7:2
それでも1-2なのが、サッカーだ。