「オンリー・ユー」というタイトルの映画は、1992年にもあって、それはアンドリュー・マッカーシーとヘレン・ハント主演の、わりに低予算のコメディーだったのですが、個人的には好きな作品でもあります。
マリサ・トメイは、1992年の「いとこのビニー」でその期のアカデミー主演女優賞をとった人で、これは1994年の作品。92年にはチャップリンの伝記映画でロバート・ダウニーJr.と共演しているので、縁があるんでしょうかね。そんな関係があるので、「キャプテン・アメリカ」で彼女がピーター・パーカーの叔母役でマーベル映画に出ることでまたロバート・ダウニーJr.との共演になったのはうれしかったり。
ストーリーは、前年の「めぐり逢えたら」とかなりかぶる感じで、婚約者がいるけれど、いまひとつ確信が持てないでいる主人公フェイスが、幼いころのボードゲームで知った運命の人の名前に振り回されて、仕事も結婚式の準備も放り出して、彼を追ってイタリアへ旅立つ、という話。彼女の兄と結婚していて、暮らしに幻滅している親友もついて行って、自由を謳歌する、という話。
その行き先で、その運命の人「デイモン・ブラッドリー」を名乗った若者(ロバート・ダウニーJr.)といい雰囲気になるけれど、実は彼の方がフェイスに一目惚れしていて、彼女のそばにいたいがために嘘をついていた、という話。それを知ったフェイスは激怒して彼を遠ざけるのだけど…。
途中から本物のデイモン・ブラッドリー探しと、本当の気持ちの間で葛藤するフェイス、彼女の幸せを願いながらも、自分の気持ちを捨てきれない若者ピーターのじれったい恋物語です。
ラストの空港での職員の対応で、アメリカとイタリアはここが違うのだぞ、と見事に対比して見せたり、アメリカは仕事第一主義だ、とイタリア人に言わせてみたり、本当の豊かさをめぐる、ヨーロッパに対するコンプレックスのようもものもちょっと感じました。
ロバート・ダウニーJr.はちょっとしゃべりが達者すぎるのが、いいのか悪いのか、本当に感じている気持ち、というものがちょっと見えにくい部分もありました。途中でフェイスをたぶらかす偽のデイモン役にビリー・ゼインが出てきたのもちょっとにやりとしてしまいました。
あとは、やはり、ロケーションのよさですね。「ローマの休日」のパロディーなんかもよかったですが、階段の多い地形、広い空と雲の形、これぞイタリア、という景色がふんだんに盛り込まれるので、ぜひいい画質で見たい作品です。ヴェニスの祭りがコロナ禍で中断された今となっては、懐かしい気持ちにもなります。
