ちょっと「ロビン・フッド」的な伝承の世界ですが、アーサー王とエクスカリバー、円卓の騎士たちと魔術師マーリンが大活躍の物語です。

父ウーサー王がコーンウォール王の妃に懸想をして魔術を悪用したことから始まる、悲劇。生まれた子はマーリンが預かり、他の貴族に預けて育てられる。そして聖なる剣エクスカリバーは石に刺さったまま誰もぬけずに月日が過ぎる。

そして、成人したアーサーが剣を抜き、王となる。彼を補佐するのは円卓の騎士たち。そして無敵の剣士ランスロットと出会い、部下とするのだけれど、ランスロットはアーサーの王妃グエネヴィアに一目惚れしてしまい、円卓の騎士の間に不和が。そしてウーサー王に母を奪われた娘モーガナは成人してからマーリンに弟子入り、そのねらいはアーサー王の王座にあった…。

人間の欲望がいかに不条理で、あるべき人の道を外れさせてしまうものか、アイルランドのロケーションの中でみずみずしく描かれています。

この人達あの身軽な姿で単身、馬にも乗らず走ったりさまよったり、いったいどこで食事と寝泊まりしてるんだろう、と思うようなシーンが随所にありますが、話の運びは非常にスムーズで、人間の業が端的に描かれてゆきます。使われている、主にワーグナーの音楽も、それぞれ元作品のテーマをうまく取り込んで、ワーグナーの楽劇を延々見せられるよりもエッセンスはここにあるのか、と感じられるほどです。

なんと見ているうちには気づかなかったけれども、ウーサー王はガブリエル・バーン、そしてランスロットを告発する騎士の一人はリアム・ニーソン。1981年と、40年前の映画なのに、顔が今と同じ。

現代ならバトルシーンの殺陣を緻密にやったり、戦略を分かりやすくしたり、CGで群衆を描いたりするんでしょうが、そんなことをしなくても、戦争の現実は描けるし、人間は描ける、そんなことを強く思わせる傑作だと思いました。