これは、日本での発売がなかったので英語版を買って見ました。
 
「アンノウン・ボディーズ」という、2017年制作のベルギーのスリラーがあって、なかなか陰惨ながら魅力あるミステリーだったのですが、どうも主役の刑事エリック・フィンケとフレディー二人のコンビものがこれ1本ではないらしい、というのがウィキペディアなどを見ているうちにわかって、その最初の1本がこれです。
 
いきなり、少女売春の話で始まって、潜入捜査しているのがフィンケ。で偽装がばれて警官隊が踏み込む中で少女の父親は抵抗してフレディーが射殺。
 
場所は変わって、フランスからベルギーに派遣される殺し屋レッダ。彼は元々ベルギーの出身らしい。そして、どうやらアルツハイマーを患っているらしいことがわかってきます。だが殺しの腕は超一流、都市計画の建築士を手際よく葬り、痕跡を消して1件目は無事終了。しかし2件目のターゲットは、なんと先ほど保護された少女売春をさせられていた少女。職業上の倫理としてそれはできん、と雇い主に逆ギレ。
 
そうするうちに、その少女が別な誰かに殺されたことがわかり、さらに彼自身にも身の危険が迫ります。レッダは反撃にでて、この謀殺に関わっている関係者を一掃しようと暗躍します。
 
一方、せっかく保護した少女を殺されたフィンケは怒りに燃え、なんとしても犯人を挙げようと。初めは殺された人間の関係がわからず混乱しているけれど、次第に少女売春を巡り脅迫された元大臣の息子とそのもみ消しを図り、都市計画のライバルを消そうとする構図が見えてきます。
 
途中からはレッダがフィンケに電話でヒントを与えながら、自分の仕事が途中で終わったなら、あとはお前にまかせる、みたいな奇妙な友情が芽生えてゆくのが面白いです。なにより、アルツハイマーを抱えた殺し屋、というだけでも面白いです。
 
最後のターゲット、元大臣を殺そうとして、でも銃を組み立てるときに撃鉄のバネを入れ忘れて殺しそびれる、という悲しさもしびれますが、病院で毒殺されかけて病院を逃亡しようとして、射殺されるシーンも胸熱、そして遺言のように彼が残したナゾかけメッセージで、元大臣の有罪が立証されるところでテンポよく幕引き。
 
アクションも、駆け引きも、心理描写も、アルツハイマーで記憶が混乱する様子を表現する編集センスも、すべてよくできています。
 
「アンノウン・ボディーズ」では上司と部下というところまで変わってしまうフィンケとフレディーの関係も、この段階ではまだ頭のいい先輩と銃をすぐ撃ちたがる血気盛んな若者、ぐらいの違いで、これがどう変化していくのか想像するとなかなか面白いです。