「ロード・オブ・ザ・リング」の前日譚ということで、60年前の出来事を。ドワーフたちの王国が炎の竜に奪われ、それを奪回しようというドワーフたちの一団にビルボ・バギンズが巻き込まれる、というお話です。基本的にはガンダルフが影で煽動しているようで、その動機はあるんでしょうが、いま一つ釈然としない。若き日のビルボがなぜ選ばれたのか、もガンダルフのなんとなくの勘だということでしょうか。

エルフの町にいったりしながら、オークの襲撃を防ぎながらピンチの連続。

どうしても戦闘シーンはもう物量作戦になっていて、誰が誰だかよくわからない中、多勢に無勢なのになぜこんなに持ちこたえられるのか、映像で無理やり押し切る感じです。

故郷を失ったドワーフの為に決起する、なんとなく名目はわかりますが、人間の歴史上繰り返されてきた領土戦争のアナロジーに見えなくもないです。

そんな中で、傑出した人物でなく、普通の人間の暮らしに解決の鍵がある、としたガンダルフの言葉には深みが感じられました。

映像的な見どころは、嵐に乗じて起きた巨人岩のバトルシーンでしょうか。なんのために戦ってるのか、全然わかりませんが、トランスフォーマーの原始的なバージョンみたいな感じで意外性がありました。

あと、この回でビルボがゴラムの指輪を偶然手に入れるわけですね。思いの外長いシーンで、なぞなぞ対決はいま一つ納得感がない展開だったり。

ラストでビルボの資質を疑っていた親玉のトーリンが認めてくれたところでよかったね、とはなります。トーリンにも、ややカリスマ性や成長の伸びしろを感じにくいところがあるのも難点のひとつでしょう。

最初の1時間が特に長く感じました。全体の必然性や個々人のモチベーションがあまり伝わってこないシーンが多くて、この監督の欠点かなと思います。