やはり元のテレビシリーズは一話完結で道中ものっぽい趣があるのに対し、劇場版は一発勝負ですから謎解きの面白さとアクションで一気呵成に見せたいと。
その中では、病院での少年の生命を救うところとかは、医師として一人でも多くの生命を救いたい、というキンブルらしさを残したんでしょうね。そこだけのシーンに出てくるジュリアン・ムーア、ちょっとスターの無駄遣いっぽい印象があります。その他には潜伏する宿の移民の親子との関係とか、もう少し描いてもいいのにな、というところ、ものすごく駆け足で進みます。
時間の節約のためか、冒頭からもう奥さんが殺されてる、というところで始まって、事情聴取とか裁判とかは超スピードであっと言う間に死刑が決まってしまう。刑務所に移送されるところで、他の囚人の脱獄プランに巻き込まれて逃げ出して、とかなり忙しいです。途中でフラッシュバックで妻が殺されたシーンとかが挟まってきます。
一方脱走したキンブルを追っかける側のジェラード保安官、かなりねちっこく、しかもディテールにこだわって指示する鬼軍曹ぶり。でも部下とのスキンシップは大事にするタイプなので、一匹狼のキンブルよりは人柄が伝わってきて、映画全体でも印象を残します。
脱走してからもシカゴの街と病院の周辺をうろうろして義手の男の身元を探るキンブル。医療データベースと電話ローラー作戦で、元警官のサイクスにたどり着く。わざわざジェラードに電話をかけて逆探知させ、サイクスへの疑惑を植えつける。
一方、動機は、キンブルが疑っていた新薬の副作用について、レンツ医師が隠蔽していたこと、と判明するのだけど、よくよく調べると検査の結果が認定されたとき、レンツは死んでいた。では誰が?となって、親友のニコルズ医師が製薬会社と癒着していたことが判明。講演会に乱入して問い詰め、最後はビルの中で対決して決着。
警察は雑な捜査で最初からキンブルと決めつけているから、後に起きた事件で地下鉄の警官が殺されたのでキンブルを射殺したくてしょうがない、というところ、ジェラードがキンブルを死なせずに保護できるか、というフェーズに変わっていくところが味付けになってます。
終盤の決着までが、二人のエリート医師が、柄にもなくアクション対決するところが、映画版ならではとはいえ、少し強引かつ不自然な気もしました。
キャストでいうと、最初はハリソン・フォード以外もいろいろ候補に上がってたんだけど最終的に彼になったようですね。正直なところ、タフガイのアクション・スターのイメージがあるから、序盤からの、殺人を疑われて、なにがなんだかわからずに死刑判決まで下されてしまう、という弱々しさが全然マッチしないです。もっと裁判でちゃんと粘って戦えばカンタンにひっくり返して真犯人をみつけられたんじゃないか、と思えてしまうのが問題。どこでスイッチが切り替わって、こうなったら自分で犯人を見つけてやるぞ、と腹をくくるのかは大きな見せ場になったはずなんですけどね。
ジェラード役も、最初は「レッド・オクトーバー」などで味な演技を見せたリチャード・ジョーダンで撮影を始めていたそうですが、脳腫瘍で降板。惜しかったと思いますが、結果的にはトミー・リー・ジョーンズにとって最大の当たり役になったと思います。
犯人役のジェローン・クラッベ、初めて見たのは「リビング・デイライツ」のコスロフだったんですが、「オーシャンズ12」「トランスポーター3」などで味な役を。オランダ出身なのでネイティブほどの英語じゃないので、ちょっとくせのある役柄が多いですね。
サイクス役のアンドレアス・カツーラスも味のある俳優さんですが、今回はただの雇われ暗殺者という感じで深みはなかったかな。「誰かに見られてる」「コミュニオン」「ベルボーイ狂騒曲」「ホット・ショット2」など、スリラー、SF、コメディーと幅広く出演していました。
