幼いころから魔女として育ってきた母親が自分の娘の危機にどう対処するか、というところで、周囲の無理解や差別意識を匂わせながら、人身売買の横行する腐敗したアルゼンチンの世情も反映している、という感じです。
幼いころに家族を亡くし、その仇を祖母の黒魔術でとったセレナ。時は流れて彼女は母親となり、街では魔女と噂されながら思春期を迎えた娘と二人暮らし。娘には携帯も買ってやれない貧乏暮らしで、人と同じ暮らしがしたい娘はやや反抗的。
そんなある日、バイトを紹介するといわれて参加した娘は、友達と一緒に人身売買の組織に誘拐されてしまう。魔術でメッセージを受け取ったセレナは警察にいくが、取り合ってもらえない。そんな中、娘の友達の父親が交渉してくれたことで捜査も本腰に、学校の保護者たちも抗議運動を起こしてくれる。
実はこの人身売買、警察や市長も目をつぶって暴力団と結びついて行っている売春組織によるものだった。
セレナは魔術を使って下っぱの一人を突き止めるが、娘たちが見つかりそうになったところで、あと少しのところで魔よけをした連中に出し抜かれ、取り逃がしてしまう。
市長が裏にいることを突き止めたセレナは、病気で死んだばかりの市長の妻に成り済まし、市長の娘を誘拐、市長との直接交渉に。なんとか娘たちを助け出したあと、娘が撃たれてしまい、命を助けるために最後の魔術として自分の片目を捧げて終わり。
前半、あまりに世渡りが下手な魔女にびっくり、テンポも遅いし大丈夫かな、と思ったら、後半は少しましになりましたかね。それでも、魔術を使った、というよりは、少し頭を使えば推理できるところを回りくどい手段を使ってやっている、という感じのシーンが多め。瀕死の重傷を追って、山羊を犠牲にして生き返るとか、倉庫の扉を封印して、裏切ったやつを焼死させるとか、が精々な感じでした。
途中で、悪魔に魂を売るから、パワーアップさせてください、みたいなシーンがあったんだけど、そこのパワーアップ度があまりなくて拍子抜け、しかも娘を救ったあともそんなに悪に染まった感じでもなく、親子仲よくなってめでたい、という感じ。魔法を使った「96時間」なのかな、と思わせて、見事に裏切った感じです。
娘役が、個人的な物差しからするとあんまり魅力がなくて、そこは残念でした。
こういう黒魔術系とか、ロマをめぐるヨーロッパの事情などを少し反映しているんでしょうかね。セレナも、人生ここまで生きてきた割には、世の中を渡り歩く知恵があんまり身についてないのが、どうしてなんだろう、とか思いました。
