ティム・デイリーは、「マダム・セクレタリー」でベスの夫ヘンリー役の渋い中年の時代しか知らなくて、いったい若いころはどんな俳優だったのかな、と思っていたのですが、本作でその一端が知れた感じがします。そこそこイケメンだけど、突出した若々しさやかわいらしさはなくて、実直な不器用さが売りだったんだな、と納得しました。

リチャード・ジャックスは研究畑の人なんだけど世渡りが下手で今は香水を作る会社で研究を。しかし余暇には自分の研究もあって婚約者のセーラとはあんまり時間がとれていない。そこに大祖父の遺産が入ると聞いて田舎に帰ると、他の親戚がヨットやら別荘やらをもらっているのにリチャードに残されたのは研究ノートのみ。いったいどういうこと?

だがそのノートには、重大な秘密が隠されていた。人間から悪を消して善だけを残すことはできるのか?大祖父その人がジキル博士だったらしい。その過程でちょっと女性ホルモンを多めにした薬を飲んだけっか、リチャードは女性に変身してしまった。しかもその女性体ヘレン・ハイドになっている間には記憶がない。初めは女性の気持ちならではの取り組みでオフィスでも人気が出始めるけれど、同僚に火傷を負わせたり上司に体を使って取り入ったり、次第に悪事を企み始める。次第に体を乗っ取られそうになりリチャードも焦り、反撃を考える、という話。

婚約者のセーラも初めはヘレンにだまされ、女装のリチャードを誤解したりするけれど、防犯カメラの映像を見たことで真相をしり、リチャードと協力してヘレンに注射を。

めでたく実現した香水の発表会の場で、ヘレンがリチャードに変身するおまけ付きで万事解決。

ちょっと女装趣味やストレート、ゲイに対しての偏見じみた扱いがないでもなく、その辺は時代かなとも思うのですが、これをテーマにすること自体がちょっと勇気のいることだったかな、と思い、評価したいところです。

設定で香水会社なのに研究者や重役は男性ばかりで女性はアシスタントか秘書、という男社会の矛盾も指摘している面もあるかなと思います。ショーン・ヤングはちょっと気品とミステリアスさが「ブレードランナー」そのままで、それを裏切る腹黒さがあってよかったんじゃないでしょうか。このちょっと前に出た「エース・ベンチュラ」ではややもったいない使われ方だったので、ずっといいと思いました。

この設定ならもう少し笑わせてくれる要素が多めにできたような気がしないでもないし、ややリチャードの前半のやられっぷりがダメダメすぎて、あまり研究者らしい知性の閃きを感じさせてくれないのはイマイチかな、とも思うのですが。

公開当時はあまり評判がよくなかったとのことですが、でもトータルではなかなか楽しい作品だったと思います。オープニングのテロップとか、「ビートルジュース」をだいぶ意識したような感じなんですが、当時の流行りだったんでしょうかね。

上司役のスティーヴン・トボロウスキー、すごく見覚えがあったのはなぜかと思ったら「恋はデジャ・ブ」でビル・マーレイの同級生役で何度も再開していたからでした。あと最後の方に「バットマン」で記者役だったロバート・ウールがちょい役ででています。