日本では公開されていないらしいクライム・スリラー。
アンソニー・ホプキンズとライアン・ゴスリング主演です。
お話はというと、ちょっと「刑事コロンボ」的な倒叙形式に近いスリラーです。アンソニー・ホプキンズ演じる著名な航空エンジニア・テッドが、浮気をしている妻を撃ち、現場にかけつけた妻の浮気相手の刑事ヌナリーに自白をする。妻はまだ息があって、昏睡状態のまま病院に。
そこで登場するのが検事のウィリー(ゴスリング)。彼は有罪率97パーセントを誇り、民間の弁護士事務所へヘッドハントされたばかりの要領のいい若手。有罪率が高いのは、難しいケースを人にまかせているから。今回の事件は、転職の直前だけど、自白があるなら楽勝だとふんで、軽い気持ちで引き受けた。
ところが、いざ裁判になると、弁護士を付けずに自分で弁護をするテッドが無罪を主張。なぜか、テッドの拳銃には発砲の痕跡がなく、物証が怪しいことに。肝心の自白も妻の浮気相手のヌナリー在席の場でとられたものだと証拠能力を失ってしまう。妻も意識不明で証人もゼロ。下調べもろくにせずに裁判に臨んだウィリーはボロボロになり、転職の話も宙に浮く。新しい上司のニッキー(ロザムンド・パイク)の取りなしでなんとか当座はしのぐものの、結果的に裁判では惨敗。浮気が公表され過程も失ったヌナリーは絶望のあまり裁判所で自殺。
無罪放免になったテッドは、病院の意識不明の妻の人工呼吸器も外させ、ものの見事に復讐を達成。
一時失意に沈んだウィリーだが、ある点から、拳銃が消えたからくりを見抜き、テッドの屋敷で彼と対峙する…。実は、テッドの拳銃は、全くヌナリーの拳銃と同じ型だった。あらかじめ拳銃をすり替えておき、ヌナリーの拳銃で妻を撃つ。屋敷にヌナリーがやってきたとき、妻の様子に動転したすきに、拳銃を元に戻す、というからくり。
裁判では「一事不再理」ということがあり、同じ罪では問えない、とうそぶくテッド。しかし、最初の罪は妻の「殺人未遂」であり、後の人工呼吸器を外させたのは「殺人」で、別な裁判、新証拠なのですね。勝負あった、と新しい裁判が始まるところで終わり。
序盤のウィリーの軽さが目に余るので、用意周到に犯罪を練ったテッドにはまるでかなわない感じ、ちょっと「羊たちの沈黙」を思い出させる、アンソニー・ホプキンズの本領発揮の感じがありますね。
途中まで彼をかばうけど、結局見捨てざるをえないニッキー、結局彼にとっては一時憧れた上流社会の窓ではあったのだけど、正義を求める、というよりは結局利益を生み出す機構としての弁護士事務所でしかなかったんでしょうね。
情けない落ちぶれ方をするヌナリーには、「REVOLUTION」「赤ずきん」のビリー・バーク。同僚の刑事役にクリフ・カーティス(「正義のゆくえ」「ドクター・スリープ」「ワイルド・スピード」のホブスなど)、他にも手堅い脇役陣が固めています。
結果的に奥さんも殺されてしまうし、ヌナリーも死ぬので、そういう意味では犯罪は完遂されてしまっている、というのがちょっとひっかかりますが、それでもなかなか法廷・犯罪スリラーとしては緊迫感がありました。なんで日本では観る機会がないんでしょうね。ちょっとだけ「フュー・グッド・メン」を思い出させるものもありますかね。ライアン・ゴスリングは、「ブレードランナー2049」で無表情を見慣れてしまったので、若き日の弱点だらけの弱々キャラがなんか新鮮でした。
