ロビン・フッドもので比較するとケヴィン・コスナーはイギリス風英語をやる気が全くなくて、ちょっと奇妙な作品だったですが、でも時代考証としてはそれっぽくなっていた感じです。

今回の作品は、ロビン・フッドの時代の社会がどうなっていたのか、あまりリアルには寄せずに、現代社会と通じるテーマを強調した感じでしょうか。宗教戦争に踊らされる大衆、社会経済と民主主義といったモチーフが、イラク戦争以降のキリスト教対イスラム世界の対立と交錯しながら伝わってきます。

ロックスリーのロビンが十字軍遠征に参加するのは、コスナー版と同じ。そこで目撃する無慈悲な虐殺に反対して反逆者として送り返される、というのはちょっとしたひねりですね。そして帰国したら領地は没収されてノッティンガム卿のものになっていたと。そして愛しのマリアンは、ロビンが死んだと信じて友人のウィルと結婚していた。絶望するロビン。

そこで、彼を密かにつけてきた異教徒(ジェイミー・フォックス)が、ロビンに復讐の方法を教える。初めはノッティンガム卿に従うふりをして背後で動いている大物を突き止めろ、と。その裏では庶民が巻き上げられた税金を襲って民衆に配る。最初の弓矢の訓練とかが、香港のカンフー映画とか「ゴースト」のノリだったのがおかしかったです。

だんだん派手な襲撃があり、心配してローマから枢機卿がやってくる。そして金が大事なのはイスラム世界にもばらまいて戦争を長引かせて儲けようとしていたからだと判明。ロビンの知らないところでマリアンも仮面舞踏会に紛れ込んでその証拠の書類を手に入れていた。

4日後にローマに送る金を補充するため民衆の財産を容赦なく没収するノッティンガム、そこでウィルとロビンが激論をかわし、民衆が一致団結して反乱ののろしをあげる。船に送る金を襲撃し、見事成功、シャーウッドの森に逃れて新しい生活を始めるところで終わり、と思ったら、死んだノッティンガム卿の後任にマリアンを失ったウィルが就任するところで終わり、続編に含みを残しているんでしょうか。

ノッティンガムという土地柄が、完全に産業革命あたりのイギリスかと思うほどで、鉱山での鉄鋼業がすごく盛んなイメージ、仮面舞踏会とかカジノとか、貨幣経済がとても発達したイメージは、ロビン・フッド映画で見るものというイメージがなかったので新鮮です。

ついてきたイスラム教徒が名前がややこしいので「ジョン」とされるくだり、いわゆる「リトル・ジョン」は彼だった、というひねりでしょうか。坊さんのタックは最初から幼なじみ設定とか、いろいろと工夫はしてあります。

アクションが近代的で、弓矢のスピードとか、カメラそばをかすめる描写とか、小気味よく描かれていました。剣技はほとんどみせなかったですね。あとは馬車のカーチェイスとかもなかなかでした。

エンドクレジットでハンガリー系の名前が多いなと思ったのですが、クロアチアでロケしたことと関係ありますかね。アクションもそちら系の仕込みなのかもしれません。

マリアン役のイヴ・ヒューソンは美人度はそれほどでもないですが意志の強さを感じさせる存在感。U2のボノの娘だそうです。タロン・エガートンは「キングスマン」シリーズが出世作になるんでしょうか。少しトム・ホランドっぽい甘さとかを匂わせつつ、弓の早撃ちとか頑張ってました。ノッティンガム卿はちょっと敵役としては小粒感が漂いますね。