「チーム★アメリカ ワールド・ポリス」という、サンダーバード風のマリオネットで作られた、超下品なコメディー映画を見たことがあります。ノリ的にはそれに近いのですが、演じているのが人間と、けむくじゃらのパペットだ、というのがさらに子ども向け感が強くて、下ネタギャグとのミスマッチ感がつよいです。

で、参加プロダクションの中にHenson Alternativeというのがあったり、監督名がBrian Hensonというのでさては、と思ったらやはり、「セサミ・ストリート」で有名なジム・ヘンソンの息子でしたね。お父さんが生きてたら、この企画許したかな、と少なからず思いました。

パペットと人間が共存する世界。だけど人間とパペットの間にはやはり溝があって、主人公のフィル・フィリップスは元々は警察に勤めていたのだけどある事件をきっかけに退職して、私立探偵をやっている。新しい依頼人が訪れ、調査を始めたとたんに、パペットのポルノショップで銃撃事件が起こり、店主・客含め皆殺し状態に。捜査にやってきたのは元相棒のエドワーズ(メリッサ・マッカーシー)、どうも仲が悪いようで。

しかし、その後もフィルの周辺で殺しが続き、どうやらかつて放送していたHappytime Gangというパペット番組のレギュラーキャストが次々に殺されているらしい。そのうちフィルも容疑者の一人として追われる身に。秘書のバブルスとエドワーズの協力で手がかりを得て、犯人はかつて誤射で死んでしまった男の娘だったとわかる。

最後は高飛び寸前の犯人を射殺してめでたく刑事に復職、というハッピーエンド。

トーンとしてはハードボイルドの流れをくんだ作りを意識していて、語り口は「ディック・トレーシー」を思い出すものもあり、あと多文化共生テーマとしては「エイリアン・ネイション」とも通じる部分があるのですが、感情的な軸はかつての相棒との仲違いの経緯と和解に収れんしていったので、パペットのアイデンティティーを深く掘り下げたり、価値観の違うものが共生する社会とは、と問うところまではいかなかったかもしれません。

メリッサ・マッカーシーは、とりあえず外れなしの下品ぶり、パペットを相手にしても会話はアドリブっぽいものが飛び交っていて、いいテンポです。他には「ブライズメイズ」でマッカーシーと競演したマーヤ・ルドルフがバブルス役で登場。

人形操演では「セサミ・ストリート」のエルモ役で有名だったケヴィン・クラッシュとかが重要な役を演じているので、いわゆるジム・ヘンソン・ファミリーが全面的にやっているわけですね。善良な子ども向けのものを伝統的に手がけてきたこのプロダクションがこういうアダルトなギャグものをやることに関しては、どういう経緯があったのかな、とちょっと疑問に思わなくもないです。