「ザ・コール」とテレビシリーズの「9-1-1」あたりで見ているコールオペレーターの仕事。その声の情報だけから何かをつかんで事件を解決しようとする警察官の葛藤をからめて、やるせないオチに向けての密室劇。「フォーン・ブース」のミステリーと「摩天楼を夢みて」の心理的追い込みを思い出す傑作です。

アスガーは、ある事件で訴追を受けて、警察の仕事の現場からは離れている身。せめてできる仕事を、と電話オペレーターをやっている。心の底ではちょっとこの仕事をバカにしているところがあり、こだわる時はいいけど、通報者をないがしろにしたり、越権行為などもついやってしまう。

一人の女性イーベンの通報から、ただごとではないと察知。どうやら誘拐されているらしい。車を運転しているのは?手がかりを得て自宅に警官を差し向けたり、身元を探ってどうやら元夫のミケルが怪しいらしいと。

自宅には娘がいて、赤ん坊の弟もいるらしい。だが、警官が実際に着いたとき、赤ん坊の弟は惨殺されていた。データベースにあったミケルの電話にかけるが、聞く耳持たず切られてしまう。

車のトランクに監禁されたらしいイーベンにレンガでミケルをなぐって逃げろとアドバイス、その直後、彼女の言葉から、赤ん坊を殺したのはイーベン本人だったとわかる。彼女は精神病で赤ん坊がヘビに襲われていると思い込んでいたのだった。

そして自分の罪を悟ったイーベンからの電話。陸橋から飛び降り自殺しようとする彼女を止めようと、犯罪者の若者を不必要に射殺した自分の罪を告白。結果、彼女の生命を助けることには成功したが、明日の法廷では有罪が確定。

オペレーターの仕事に関しての予備知識がなければ十分に面白いところ、どうも他の作品で見ていると、アスガーの仕事ぶりが自分勝手だったり、分をわきまえていなくて、プロフェッショナルとしては失格な行動が目立つのは前半気になりました。

途中から、それが彼そのものの警察官としての欠点でもあり、周りもそれを扱いかねていたような存在だったのだな、その犯した罪とは?というところと、その罪を自分で自覚して背負えるか、というところに重ねていくのが見事だな、と思いました。

音声の作り方が丁寧で、電話の向こうに耳を傾けていると聞こえてくるようななにげない背景音から観る方にも考えさせる要素がたっぷりあり、時間の使い方もゼイタク、ヨーロッパならではのアプローチが見事でした。