イギリスのオックスフォードを舞台に作られた、SF青春ホラー、とでも言えばいいでしょうかね。

スペイン語圏出身の留学生アナは、実験中にふとしたことから物質の転移を実現してしまう。そのうち、恋人ネイトとハッカーの友人の協力で、世界のパソコンの演算力を拝借して実験を大規模にしていく。

単純な無機物からイモムシ、ネコなど実験対象を拡大している途中で、マイクロソフトがハッキング対策を行うことがわかり、時間切れがせまる。結果を出したい3人は人体実験を強行、アナが実験台になるが…。

実験の翌日目覚めたアナ、記憶がない。と思ったら泥棒に入られたり、ネイト達がよそよそしいし、実験室の倉庫の鍵がかかっている。いったい何が?

やがてハッキングの犯人をたどって警察も捜査にやってくる。アナは尋問を受けたり、独自に真相を探るために行動を開始し、ネイトの家で実験を記録したビデオを観るが…。

話の途中から、どうもアナの人格が二人いるらしいな、というのは推測できてしまったので、あとはどうオチをつけるか、ということだけだったのですが、そこに落とし込むなら、友人二人はもっと違う説得の仕方があったんじゃないかな、というところはすごく引っかかりました。まさかの主人公が「残像」だったとはある意味禁じ手。最後に説得されて消滅することを承諾するとはまさかの展開。

あとから登場した実体の方のアナが、妙に理知的で冷たい感じがしたのは設定としてどうなんだろう、と思ったり、ラストの思わせぶりな実験器具のアップはなんだったんだろうとか。実験動物に反対のデモ、というのも最初から丁寧に伏線を張って、最後は集団に糾弾されるシーンとか、うまいこと使ってたなと思いました。

まあ、でも、ハリウッド製の客観描写で誰にでもわかるように説明するやり方だとこんなストーリーは成立しないんで、やはりヨーロッパ発のSFというのは、出自にまつわる文化的背景とか、個としてのユニークさを尊重した作り方だな、と思った次第。