かつてのイケメンとは違った、ダメ人間だけどどこか憎めない愛嬌のある小物の情報屋を、リチャード・ギアが演じています。見ているうちにイアン・マッケランか、ジョン・ハートか、と思うような枯れた味わいとオフビートなテンポが気持ちよくなってきました。
イスラエルとアメリカの合作映画。ノーマンという、人と人を引き合わせることでコネを作って生きていく、フィクサーと言うにはほど遠い人物。いろいろやってもうまくいかなかったのだけど、ある時、イスラエルの若手政治家を付け狙って、靴屋の前で声がけに成功。仲良くなって靴をプレゼント。
3年後、そのミカ・エシェルがイスラエルの首相となってアメリカに。エシェルに思い出してもらえたノーマンはいい待遇を受けて、いろんなコネを作ります。
でもいろんな人々のいろんな要求に応えて筋道をつけるのにも四苦八苦。ユダヤ教会の立ち退き問題と友人の結婚、エシェルの息子の進学問題など難問山積。
そんなとき、イスラエルで政変が。エシェルに汚職疑惑が持ち上がり、失脚の恐れが。純粋に友情から彼のことを心配するノーマン、アメリカ人の実業家が不利な証言をするという情報が流れ、それを突き止めようと以前知り合った国連の弁務官に接触するけれど…。
最初は単なる山っ気でやっているかに見えた口利き稼業、ノーマンにはノーマンなりの虚勢もあるけれど、実はそれは友情の上に成り立っていた、という切ない話。
ラビ役のスティーブ・ブシェミが見られてうれしいのと、友人役マイケル・シーンは「フロスト×ニクソン」でフロスト役、「パッセンジャー」ではロボットのバーテン役をやっていましたね。
ちょっと、ノーマンの稼業の怪しさや生々しさが適宜省略されていて、とんとん拍子に進みすぎたり、うまい汁を吸っている感じが弱かったり、というのが物足りなく感じる部分でもあるのですが、大人の童話としてはちょっと心をくすぐられる、というか、大人で会社勤めしていると、全部を正直に言えない部分もあったりして、そこをごまかしながらなんと帳尻合わせたい、と思いながら生きている感覚は、なんか身につまされました。