最初、もう少しオカルトっぽい超常現象もありなのかな、とサム・ライミなので思っていたのですが、濃密な人間ドラマになってました。
地道に働いても暮らしの苦しい肥料店のアシスタント、ハンク。妻のサラは身重で間もなく出産。父の墓参りに兄のジェイコブとその友達ルーと行くことに。
そして帰り道に、キツネが前を横切ったことで車が事故に。キツネを追って雪の林の中に入ると、墜落した飛行機を発見。パイロットは死亡していて、見つけたバッグの中には大金が。440万ドル。
堅気のハンクは警察に届けよう、と言うのだけどルーはいただいちゃおうぜ、とノリノリ。ジェイコブもそれに同調。しかたなくハンクは自分が預かるが、誰も引き取り手のない、安全な金だとわかってから山分けしよう、と提案。
サラは最初は盗みはダメ、とか言っているけど実は一番悪知恵がいろいろと出てきて、金は少しだけ戻しておこうと言い出す。その通りにしようとしたところで、キツネを追ってきた老人を、飛行機にたどり着かせまいとしてジェイコブが殴り倒してしまう。息を吹き返したところをハンクが止めをさし、橋から転落した事故として偽装。
そして、ギャンブルで金欠になったルーが約束を破って金をせびりにくる。先行きを案じたサラは、ルーの告白テープを録音して、ゆすりの種にすればおとなしくなるのではと。親友を裏切りたくないジェイコブも、父の農場を買い戻すのに協力する、とハンクが説得。作戦はうまくいくが、だまされたと知ったルーは逆上してライフルを持ち出し、ジェイコブに射殺される。奥さんもピストルを乱射したのでハンクが射殺。
ハンクとジェイコブは口裏を合わせてうまくやりすごすけれど、ジェイコブの自責の念は募るばかり。
そこにFBIがやってくる。飛行機を探していると案内させられることになりアセるハンク。サラが調べるとどうやら元の金を探しに来た誘拐犯らしい。
森の中で犯人と対決して射殺したハンク。だがジェイコブはもう逃亡に疲れ果て、死にたいと。仕方なく実の兄を射殺するハンク。だが本物のFBIの聴取が終わったときに、本物の身代金は番号がわかっているから使えないと判明。暖炉で燃やすことに。
ちょっとした手違いが雪だるま式に膨れ上がって誤算が積み上がっていくようすが、古典的ですがうまくはまっていて、しかも父親の死を巡る事情、家庭の貧困の原因が大学の学費だったとか、兄弟のあいだのわだかまりを巡る人間ドラマとしても繊細に描かれています。これはもっぱらジェイコブ役のビリー・ボブ・ソーントンによるところが大きいでしょうね。サラ役のブリジット・フォンダも最初は清純に見えつつ、実は一番したたかでハンクをあごで使う黒幕ぶりが効いてました。
雪に閉ざされたアメリカの田舎の貧困、そして学のあるものとろくでなしの人生の落差は限りない、そのへんを描くことで一味違うミステリーになっていると思います。