アベンジャーズシリーズの本流のストーリーではチラチラとしか見られなかった、メイおばさんやMJ、ネッド、ハッピーなどスパイダーマン世界でのオリジナルキャラクターたちの活躍をやっとちゃんと見られた、という満足感のある一本。

前作「ホームカミング」では最後にちらっとしかフィーチャーされなかったMJとの関係の発展が縦軸になって、微笑ましい告白物語になっています。

「アベンジャーズ・エンドゲーム」を受けて、トニー・スタークやキャプテン・アメリカなど去ったヒーローたちが惜しまれる日々。そして死から生還した人々は生き残った人々に比べて5年間のブランクがあって混乱がまだ収まりきっていない日々の日常からスタート。ピーターはニック・フューリーの呼出し電話を逃げるように、高校の修学旅行でヨーロッパに。

ところがそのヴェニスでいきなり水の怪物が。逃げまどう学生たち。その怪物をやっつけたのは謎のヒーロー・ミステリオ。正体は並行宇宙の地球からやってきたベック。いま並行世界からエレメンタルズという怪物が地球を襲いに来ると。フューリーも合流、ピーターも参加するように言われる。そこで渡されたのはトニー・スタークからの形見のメガネ。これが実はAIと接続し巨大な軍事力を意のままに操るインターフェイスだった。

防衛のミッションにミステリオと協力してなんとか成功したピーター。だがMJへの告白に気を取られフューリーからは覚悟ができてないと叱られ意気消沈。慰めてくれたミステリオについ、スタークのメガネを譲ってしまう。

ここからが本筋のひねり。これはすべて、ベックのしかけたワナで、彼はスタークの会社をクビになった、ひねくれたエンジニアだった。他にも同様にスタークに怨みをもつ人間たちが集まって、VRとドローン攻撃を組み合わせたイリュージョンで、人々を騙してヒーローの座を手に入れようとしていたのだった。

ピーターは、闘いの現場でMJが手に入れたドローンの破片からプロジェクションの秘密を知り、とんでもない失敗をしたことを知るけれど、フューリーに化けたベックに、他に真実を知るのはネッドとMJだと、うっかり漏らしてしまう。このままでは、MJが危ない!と単身でベックとの対決を決意する、という流れ。

最後、ロンドンでのタワー・ブリッジ、ロンドン塔など、名所を心置きなく破壊しながら、クライマックス。そしてMJともめでたく両思いになり、ハッピーエンドか、と思いきや、ベックの残党のしかけたワナにハマり、スパイダーマンの正体がばれてしまうところで終わり。

そして、ラストには、今回のフューリーとマリア・ヒルの意外な真実も明かされる、というおまけ付き。

おばさんメイがハッピーとまさかのいい雰囲気になっていて、それにピーターがイライラするのも楽しいです。メイ役のマリサ・トーメイが相変わらずのコメディエンヌぶりが健在でうれしいのと、普段はフューリーの影に隠れて存在感の薄いマリア・ヒルもそこそこ登場するのでそれもよかったと思います。

ベック役にジェイク・ジレンホール。このまま順調にアベンジャーズに加入するか、と途中までは思わせてまさかの悪役。わかりやすい芝居の多いアベンジャーズの中に混じって、表情の微細な変化でものをいう、さすがの演技者でしたね。

まあ、リアリティーで言うと、そんなにVRのプロジェクションで360度の角度からばれないということはあり得ないし、ドローンと連動するのも昼の明かりの中では不可能、そしてこの程度のトリックにフューリーが騙される、ということもあり得ないだろう、とは思いますが。

MJが、いわゆる典型的美人でなくオタッキーで人づきあいが苦手、というところがなかなかツボです。