雪の世界を舞台にしていてもいつものリアム・ニーソンの無双ものかな、と思ったらちょっと趣向が違って、時々にやりとさせられるブラック・コメディーになっていました。
ネルズ・コックスマンは除雪車の運転士で毎日定期的に道を除雪して、キーホーとデンバーの車道を確保する仕事を。模範的市民として表彰までされたまじめ一徹な男。
ある日、息子が働く空港での麻薬密輸騒ぎに巻き込まれ、殺されてしまいます。通り一遍の検視で麻薬中毒とされて、コックスマン夫妻は悲嘆にくれます。猟銃自殺までしようとしたところに、難を免れた息子の同僚が真相を。復讐心に燃えた父は麻薬組織の下っぱから順に始末していきます。
途中で奥さん(ローラ・ダーン)は息子の思い出を分かち合おうとしないネルズに愛想を尽かし出て行ってしまいます。
さて、麻薬組織のトップ・バイキングはこれを麻薬の縄張り争いをしている先住民ホワイトブルの仕業とにらみ、その跡取り息子を始末。これがきっかけで麻薬戦争が全面的に勃発しかけます。
ネルズは元ヤクザの兄からバイキングの情報を得て、殺し屋を雇いますが、この殺し屋が裏切ってバイキングに密告、ところが名字だけで兄の方と勘違いし、兄が殺されてしまいます。
ホワイトブルはバイキングの息子を殺すことで復讐を企み、ネルズはその息子を餌にバイキングをおびき出そうと企み、最後は除雪車のガレージで壮絶な銃撃戦。最後に生き残るのは…。
除雪車という、滅多に映画では活躍しない車両を使って意外なアクションも見せてくれるところ、この作品ならではの魅力だったんじゃないでしょうか。
最初は息子を失った父の復讐譚でバッドエンドかと思っていたら、死人が出るたびにテロップが出たり、ろくに捜査もしていない警察の脱線した会話があったり、オフビートな笑いを追求している感じがあります。
麻薬組織の真剣なんだか抜けてるんだかわからない美学とか、抗争によって共倒れで漁夫の利を得る警察とか、そういう構造を皮肉ってる部分もあるのかな、と思いました。
さらわれた息子の妙な天才ぶりがカルテルの子分たちを小馬鹿にした感じとか、さらわれたのに落ち着いて実は家族のコミュニケーションを一番楽しんでいたり、少し心があたたまる部分もありました。
ローラ・ダーンは、最初からタバコをくゆらせて、デカダンスな空気を漂わせていましたが、案外早くフェードアウトしてしまって、ちょっと残念。リアム・ニーソンと二人合わせて、もう少し生かす方法がなかったなのかな、と思いました。