冒頭から実験映画かと思うような映像美で、少しリプチンスキーの「オーケストラ」とかを思い出しました。

予備知識なしになんだかわからないで見ていたのですが、これは二人の姉妹の心理から描いたディザスター・ムービーというのが表層的な見方のようです。

まず第一部の「ジャスティン」編。

キルステン・ダンスト演じるジャスティンの結婚式から始まるんですが、いきなり2時間遅刻、しかもそのあとも家族のぎくしゃくを手持ちカメラの不安定な映像で描きつつ、時々耽美的な映像と「トリスタンとイゾルデ」の前奏曲が挟まります。式を演出したのは姉のクレア(シャルロット・ゲインズブール)とジョン(キーファー・サザーランド)の夫婦。善意から盛大な式をしかけたのですが、ことごとく不発で花嫁は行方不明になったりして、徒労感が怒りに変わる瞬間も。

で、結局式が終わったあとには新郎すら耐えきれずに帰ってしまう、というバッドエンド。

そして始まる第2部の「クレア」編。

式のあとしばらくしてからの話のようで、ジャスティンは何も自分でできないほど精神的におかしくなっているらしい。それを家に引き取ってかいがいしく面倒をみるクレア。ジョンは少し心配。ジョンはアマチュアなのか天文学者のようなことをしていて、大接近する「メランコリア」という惑星の観察に夢中。ここで初めて「メランコリア」は「憂鬱」だけでなく惑星の名前でもあることがわかります。

初めはしっかり者でいろいろと仕切っているように見えたクレアが、惑星の接近のことには妙に神経質に。ジョンは通りすぎるだけだと笑いますが、クレアはネットで噂を検索したりして悪い方向に考えているらしい。

そのうちジャスティンの体調は持ち直してむしろクレアよりも元気に、しかも毒舌に。

そして、いざ惑星の観察が始まるとジョンの様子がおかしくなり、やがて厩で死体で見つかります。どうやら予測が間違っていて、惑星が接近しているらしい。ジャスティンはハッキリ「人類は邪悪だから滅びるといい」と断言。どうしたらいいかわからなくなり、村に行こうとするクレア。車のバッテリーはなぜかあがってしまって動かない。ゴルフカートで行くけれども途中でバッテリーが切れて結局家に戻る。このとき、ジョンの会話によれば存在しないはずの19番ホールが映っているのがちょっと謎です。

いずれにしても、最後はクレアの息子のレオを安心させるためにジャスティンは木の枝で「魔法のバリア」を築いてあげて、3人でそこで惑星衝突を迎える。

冒頭で見せた映像美は、ここではなく、衝撃波とともに真っ白に飛んで終わり。

実は、ジャスティンの正体についても、メランコリアの仕掛けについても、もう一捻りあるんだろうな、と期待しちゃっていたので、ちょっと拍子抜け。これは、大惨事において、「ふつうの人」と「鬱の人」が立場が逆転する、という心理的な逆転について描くのが一番の目的だったようで、メイキングのインタビューを読むと納得なのですが、前半のジャスティンの話から、必ずしも病気とは受け取れない描写もあったのでやや混乱しました。

テレビも電話も出てこない、孤立系の中での人間関係だから描ける、濃密な心理描写は楽しめたと思います。タルコフスキーのような哲学とはちょっと違うところを目指してるんでしょうね。