「ウィンド・リバー」といい、「リバー」と付くと雪の中の閉鎖社会の話にしなきゃいけないルールでもあるんでしょうか。ちなみに、原題フランス語なので「リバー」は「rivieres」。「リビエラ」という地名も川と関係があるのかな、とか思いました。
ジャン・レノがまだそんなに身体重くない感じで、そこにまだ初々しさの残るヴァンサン・カッセルが登場。ちゃんと認識したのが「オーシャンズ12」くらいだったので、それより若い彼は新鮮に見えます。
冒頭でいきなり猟奇殺人死体が発見され、地元警察以外に一匹狼の特捜部警視ニーマンス。独特の嗅覚で地元の大学に切り込んでいきます。すると、ここは山間の閉鎖的な空間で「大学=自治体」のようなもの。優秀な伝統を誇る反面、外部との交流がなく、時々遺伝病の発症にも悩んでいるとか。
一方で、別な町の墓と学校が荒らされ、特に貴重品は盗られていないけれども、10歳で交通事故で亡くなった少女の記録が失われていると。その彼女の線をたどるのがマックス。
やがて墓荒らしの犯人と見られる男が氷穴の中で見つかり、二つの捜査は重なることに。マックスはニーマンスを尊敬しているけれどあまりのとっつきの悪さに戸惑い。
そして、容疑者はニーマンスを手伝ってくれた大学所属の女性アルピニストに…、と思いきや大学の驚きの実態が明らかになり、事件の背景がつながってくる。
そして雪山でのクライマックス、犯人の正体は意外にも○○、というわけで最後にはニーマンスの犬嫌いも解決。
こういう、独特な風習や文化のなかに外部の捜査が入って行って、あまりのおかしさに自分の方が間違っているのではないか、という気分にさせられる閉鎖空間の同調圧力、見ていて思い出したのは「薔薇の名前」と「ダ・ヴィンチ・コード」でした。大学の図書館みたいな空気、真剣な学問の場のように思えて、風通しの悪さゆえにどんどんねじくれて狂気の世界に取り込まれていってしまう。
実は、猟奇的な内容と閉鎖系、という意味では日本にもよく似たものがあったな、と横溝正史ミステリーを思い出しました。ああいう閉鎖的なところに入っていく感じ、子どものころはあんまり好きじゃなかったんですが、最近になって、なんとなく理解できるようになってきました。
ちょっと視野を広げると、あの、閉鎖的な村社会の感じは、世界からみた日本そのものなんですよね。そのような同調圧力は、いろんな形で世界のあちこちに潜みうる、そんなことを思いました。