すごく文学的な物なのかな、とタイトルから漠然と思っていたらぜんぜん違う、ユニークな傑作でした。よく「愛と喝采の…」みたいな、原題と全く違う日本語タイトルをつけるケースがありますけど、こういう作品こそ、クリエイティブにいい日本語タイトルを考えてあげればいいのに、と思います。
キャストはきら星のごとく、しかしスターの名前に頼らず、脚本の力で数多くの登場人物のクリスマス時期の「愛のかたち」をつづりながら、全体をパッチワークのようにつなぎ合わせて、最後のシーンに思いがけないクライマックスを設定しています。
冒頭の方で結婚式を挙げるカップルの黒人男性の方、「ブラック・パンサー」の人と最初思い込んでいたのですが、実は「ドクター・ストレンジ」のモルド役でしたね。売れないロック・スターのクリスマスソングのビデオクリップはロバート・パーマー風とか、遊び心炸裂してます。で、新郎の親友に新婦が結婚式で撮影したビデオを借りに行ったところから、この3人の微妙な関係がわかってきます。
ヒュー・グラントは、若くしてイギリスの首相になったばかり、初日から新人のスタッフの女性に一目惚れしてしまう、というにやりとしてしまう役柄。コリン・ファースは執筆のためフランスの田舎にこもるミステリー作家で、ハウスキーパーの女性に惹かれていく。池に原稿を落としてしまって、二人して水に飛び込むくだりの、言葉は通じないけれど期せずして同じことをつぶやいているすれ違いはすごく面白いです。
障害のある弟を抱えてアラン・リックマンのデザイン会社につとめるサラ役のローラ・リニー、ずっと「プリズン・ブレイク」のサラを思い出してました。
あと、イギリスだからもてないんだ、といきなりミルウォーキーに飛び込んでいく若者がスティーヴ・ブシェミを若くしたみたいな感じで、当のアメリカで彼に飛びつく女の子たちの中に「24」でジャックの娘キム役をやっていたエリシャ・カスバートがいました。
全体に、イギリス人のユーモアなので、ちょっとアメリカを小馬鹿にした感じもあって、アメリカではあんまり評判がよくなかったみたいですが、そういうところを割り引いても、人のこころの機微や、ありがちな人生の蹉跌、タイミングの悪いすれ違い、などをうまく突いたなぁ、と思います。