中世のアイルランドの田舎の村から聖遺物をローマまで運ぶことを命ぜられた僧たちの物語。ある意味十字軍の時代をベトナム戦争に見立てれば「プラトーン」とも言えるんじゃないでしょうか。
最初からフランスからやって来た気取った中央権力をかさにきた奴がいて、素朴な修道士たちは反発するのですが、彼のいうことに従ったばっかりに、戦争好きの軍人たちには裏切られ、あとはひたすら逃避行。聖遺物として託されたのもなんてことない石で、その超自然的な力を信じているけれど、現実には暴力と恐怖に翻弄される、というお話です。
石にまつわる伝説が本物なのかどうか、ローマ時代に石打ちの刑で殉教した聖?マティアの遺物がなんでアイルランドまでたどり着いたのか、よくわかりませんが。トム・ホランドが、一番若くて世間知らずの修道士として、英語はけっこうアメリカ英語っぽかったですが、田舎のシーンではゲール語?を駆使して結構雰囲気を出してました。戦闘シーンやアクションになると、全体にキレがありすぎて、現代劇みたいになってましたが。
フランス人修道士ジェラルドゥスの利己的で政治的野心を抱えた背景がわかってくるにつれて、早くこいつ成敗されますように、と思ってラストを迎えるという。
途中でイングランドのノルマン征服の過程での戦乱の世を嘆いて、「昔は平和だったの?」と聞くと古老が「いや、ずっと戦争だった」と答えるあたりがこの映画の一番のメッセージなんじゃないかと思います。
ずっと黙って戦っていた寡黙な男(ジョン・バーンサル)が、ずっとアダム・ドライヴァーかなぁ、と思っていたという。