「ドラゴン・タトゥーの女」シリーズを作ったスタッフの次の北欧ベストセラーシリーズ、というのが触れ込みです。北欧はこういう猟奇的ミステリーが好きな国民性なんでしょうか。

有能だけど頑固で強引で友達の少ない殺人課の刑事カール。ある日応援を待たずに現場に踏み込んで、同僚の一人を失い、一人は寝たきりに。殺人課には置けないと、過去20年の未解決事件を整理しろ、と実質窓際族を言い渡されます。

そこで出会ったのが、別な事務職から流れてきたアサド。移民系でしょうか。淹れるコーヒーはやたら濃くてカールの口にはあわない。いつもしかめっ面のカールに対して、アサドは楽観的。

そんな二人が見つけた事件は、5年前に失踪して調書の上では「自殺」とされた女性議員ミレーデの失踪事件。担当した刑事は無能とわかっていて、現場の聞き込みに。知れば知るほど裏がありそう。船の上の自殺現場にいたとされる議員の弟は障害を抱え、コミュニケーションが難しい。だが現場には弟と一緒にもう一人男がいたらしい。

ミレーデと付き合っていた男の線を洗ううちに、あるパーティーで知り合った謎の男がいたらしい。写真はないものか、とパーティーの写真を施設の男に見せたところ、ビンゴ!その男は誰?探るとすでに故人だと。だがその写真は全くちがう顔だった…。

ミレーデの家庭の事情とか、彼女の運命がどうなったか、刑事たちが知るよりも前に映像で描かれる、というのがこの作品の珍しさ。ある密閉された潜水艦のようなタンクの中に囚われて、気圧を1年に1気圧ずつ上げた環境の中で食事だけ与えられてかろうじて正気を保ちながら生存していたのでした。視聴者の方が先に真相の一部を知っているわけですね。なぜこんなことをするのかな、と思ったら、それは動機の部分を際立たせるためでした。

犯人「ラース」は実は孤児院の出身。彼がそもそも施設に入れられたのは少年期の交通事故のせいで、その原因を作ったのが、少女時代のミレーデだったと。

最後はラースの家までたどり着いたものの、ミレーデのタンクは急激な減圧をされ、今にも死にそうに。ラースを連行するのか、家に戻るのか、みたいなサスペンス、珍しいですね。

最終的には結果オーライでカールのピンチにアサドが来てくれて絶体絶命のピンチを切り抜け、ミレーデも衰弱しているけれども一命をとりとめ、弟とも再会。警察では殺人課への復帰を断って、「特捜部Q」での自由な捜査活動継続を決意したところで終わり。人が取り上げたがらない事件のストックに取り込む偏屈、という意味では、迷宮入り事件を扱う「Xファイル」と呼んでもいいんじゃないかと思います。トリックの質さえ確保できれば、いいシリーズになりそうです。

はぐれもの同士でも、陰気な先輩と陽気な移民の後輩、というコントラストが面白いのと、寝たきりになった元相棒も、カールを恨んでもおかしくないような悲惨な状況にありながら、逆境のカールをはげましたり、胸熱な展開もあったりしました。彼が今後も活躍するといいなと思います。