超常現象を見抜くことが生きがいの女性作家が、学校の幽霊騒ぎをきっかけに体験する出来事。

フローレンスは警察と協力して降霊術のイカサマなどを摘発してそれを本にしてベストセラーになっている、ちょっと高慢で人と触れ合うのが苦手な女性。彼女のところにやって来たカンブリアの寄宿制の学校の先生ロバートが、生徒たちがおびえる幽霊騒ぎを解決してほしいと依頼。

行ってみると、1920年代なので体罰が横行し、子どもたちの間でもいじめが多発する陰湿な環境。フローレンスは科学的な装置を大がかりにしかけて幽霊が子どもたちのいたずらだということを証明しようとする。

結果的に、最近起きた子どもの死は先生の過酷なしごきが原因の病死と判明、一件落着かと思えたときに、それまで感じていた奇妙な雰囲気をフローレンスは察知。水の中に引き込まれたり、建物の中のミニチュアの模型に彼女の行動がすべて克明に再現されていたり。

休み期間とともに子どもたちは親元に帰り、一人だけ残ったトムと接近、ところがそれから、彼女の周りには異変だらけ、そこからなぜかロバートと恋仲になり、庭師のジャッドには襲われ、途中でトムという子どもはここにはいない、と明らかになり…。終盤の急展開。

結局、フローレンスの生い立ち自体が抑圧されていた記憶のそこからよみがえり、彼女はかつてこの家で暮らしていた家族の娘。トムは父親が浮気して作り、妻を射殺した際に誤って殺してしまった子どもだとわかる。寮母モードは、実はその死んだトムの母親だったと。

すべての謎が解けた後も、モードはトムがあの世でさびしがらないようにと自分とフローレンスに毒を盛り、ロバートと恋に落ちたフローレンスは生き残るために解毒剤を。

ラスト、フローレンスが生き延びたのかどうか、あえてハッキリ明かさないような描き方をしていたけど、ニュアンスからすると、生き延びた、とするのが正しい受け取り方のように思います。

序盤からは少し「薔薇の名前」的な、宗教と科学、死者と生者といった対比がまだ科学万能ではない時代の空気の中に描かれるのかな、と思っていたのですが、後半はがらりと「シャイニング」ばりのサイコホラーに変わっていきました。そして全体はイングランドの牧歌的田園風景とちょっと明かりの暗い雰囲気の中に描かれていく、というのが特徴。

キャラクターの描き方で言うと、フローレンスに対して、あんまり肩入れしやすくなかったのが、作品としては弱いですかね。元恋人を亡くしたという負い目と、霊魂を否定する研究をしているとか、科学を信奉している、といった信念の背景があんまりうまく結びついていなくて、科学的手法に対しても、彼女の手腕のほどがちょっと中途半端に見える部分があります。

途中からトムなんていなかった、という展開になるのも、モードがトムを完全に認めているから見る側は騙されるんですが、ちょっと共犯多すぎませんか、みたいな。冒頭でかつてこの屋敷で起きた一家惨殺事件、みたいなネタ振りあったのは知っていたのでオチはつながってはいるのですが、それにしても、みたいな。彼女一人の記憶を取り戻すためにモードが事件をしかけるとか、効率悪すぎませんか。

ロバートのたち位置もちょっとその意味では元軍人、ということ以外、ちょっと弱かったかな、と思いやや残念。

まあ、でも、ただ見せればいい、というホラーのこけおどし感よりは心理的な描写がよくできてたとは思います。