前作のポール・ヴァーホーヴェン監督の作品に比べると無駄なエロとスプラッターが減って、テンポのいい逃亡劇になりましたね。
まずパーティーの会場。そこである科学者が大勢が目撃する場で一人で引っ張り回される。そしてトイレで殺される。もう見る側はこれは透明人間の仕業だ、とわかるところが気持ちがいいです。そして、「緩和剤」を巡る攻防なのだとわかる。
そして、最初の殺人を調べている刑事二人がいきなり担当を外され、研究者の護衛を任される。その途中に相棒の女性刑事は死亡。残されたターナー刑事は真相をなんとしても探り出そうとする。誰が真相を隠そうとしているのか。狙われているマギーは何を知っているのか?
見る側も前提を知っているから、主人公のターナー刑事がとまどいながら真相を探ろうとしているときに、素直に応援できるというか。逆に情報を妙に抑えるキャラクターがいると、少しフラストレーションになるという。
悪役側だとそれは情報を抑えたいから自然なのですが、追われる立場のマギーがなぜそんなにいつまでも黙っているのか、は少し不自然なところもありました。
プロットとしては警察内部も信じられなくなり逃亡する、謎の警告をしてくれるのは前の実験の失敗作、絶体絶命に追い込まれてからターナー刑事も透明になる道を選ぶ、など、流れに沿ってのドラマチックな展開がいろいろ見られてよかったと思いました。
最終的には、ターナー刑事も暴力的な衝動にこれから襲われて事件を起こしてゆくのか、あるいは制御する方法があるのか、マギーが協力してくれるんでしょうかね。続編をこのままストレートに作れるようなものかどうか。
今回の特徴は、透明人間との接触をいろんなワイヤーアクションなどを使って表現しているところで、すごくリアルに言うなら、雑踏の中での追跡劇で歩行者があんな風に吹っ飛ばされる理由なんかないんですけど、見ていて楽しいからいいか、という。
クリスチャン・スレーターも中年の嫌らしさは声にも表情にも現れてきていて、かつてのジャック・ニコルソンのようなよさがこれから出てくるのかも。彼以外はそれほど著名キャストはいませんが、いいアンサンブルでした。ターナー刑事役のピーター・ファシネリ、すこしチャールズ・グローディンを若くしたような感じでぽっちゃり気味。最初はちょっと甘すぎじゃないかと思ったのですが、流れにつれて引き込まれていきました。マギー役のローラ・レーガン、走る姿勢がいま一つよくなくて、アクション向きではないのかも知れませんが、ユマ・サーマン的な美女。