原作がある小説だとしかたないのかな、とも思いますが、思わせぶりにしすぎて、オチがたいしたことないのに気分だけで引っ張られるのは気持ちよくないと思いました。

映像的に回りくどい割に誰の気分を伝えたいのか、脅かすつもりなのか考えさせるつもりなのか、時系列のいじり方も間が悪く、サスペンスの盛り上がるタイミングも不発。

冷戦の時期、「サーカス」と呼ばれるイギリスの情報機関に内通者の疑いが持ち上がり、工作員もブダペストで任務に失敗、トップの二人は辞任に追い込まれます。

しばらくして、政府にリッキー・ターという工作員からの内通者の通報があり、それを調べてくれ、と引退したスマイリーに依頼が。そこから辞めさせられた過去の関係者や、リッキーなどとの接触を通じて、かつて情報部で何が起きていたのかを洗い出す作業が。

この辺の、過去にさかのぼるくだりも非常にご都合主義というかまだるっこしく、リッキー・ターの情報も非常に冗長で要領を得ない。ターの上司だったギラムがいろいろ資料を探ったりしているのも、スリルがまったくなく、発見の意外性も出ないので、非常にイライラします。

そのうち、スマイリーが過去に対峙したロシアのスパイ・カーラが背景にいることがわかってきたりするんですが、この辺の情報の出し方も下手。

最終的には最初から怪しかったやつみんなほぼぐるになっていて、その中から一番の裏切り者は誰かを当てるだけなので、大してカタルシスがないと。

ただ、最後まで真犯人がばれにくかったのは、スマイリーの妻を誘惑するようにと、カーラの入れ知恵があったからだ、というのだけが、意外性のある情報なんですが、そんなの、勝手にしろと思います。

たぶん、本で読んでいると時間もかかるし、うにゃうにゃ伏線があって、読みごたえがある感じなのでしょうが、映像がつくともっと簡単に済む話を、文字を追うように映像化しているので、ただ回りくどい、あるいは見る側が本を読んでいることを前提にしたような不親切な語り方をしている、という風に見えました。

マーク・ストロングが、オープニングクレジットで名前が出る前に撃たれてしまったので、「え、これで死んでいたらすごい」と思ったらそうではなくてよかったです。ジョン・ハートがトップの“コントロール”役。コリン・ファース、ゲーリー・オールドマン、ベネディクト・カンバーバッチなど、実力派はそろっていますが、スマイリー役にオールドマン、どうだったでしょうか。彼にはもう少し複雑な役を振った方が生きたというか、彼と一緒に真相を探っていこう、と共感しづらい役柄ではなかったかな、と思います。