すでにシビル・ウォーでデビューしてしまっているから、というので、設定を丁寧にやっていないのが、よくも悪くも今回の特徴ですね。

サム・ライミから数えても3つめのシリーズなので、定番商品とは言え、ちょっと頻繁に作りすぎでは?という感じもしてしまいます。

その分、ピーターを巡る家族関係、友人関係も過去のものとは少しちがっているのが特徴で、あまり説明もされないので戸惑う部分もあります。

物語としては、前回のアベンジャーズとチタウリの戦いで廃品を回収していた業者トゥームスが、スタークの会社に仕事を奪われたのを逆恨みして、チタウリの武器を使って儲け始める、というのが始まり。廃品回収の業者に、そんな技術がどこにあったんだろう、というのはちょっと不思議で、彼らの会社の下町の腕自慢、という感じの前振りが少し足りなかったのかもしれません。

ピーターはピーターで、スパイダーマンになるまでの経緯が飛ばされている分、ご近所のスケールの小さいトラブルを解決している、という設定がかなりチマチマしていて、街にも本当に感謝されていない小物にされてしまっているのはかわいそうな感じがしました。糸の使い方も、丈夫さもそれほどなくて、その辺の設定のコンセンサスが少し甘いかな、と思いました。おっちょこちょいな高校生の性格は遊びたいんでしょうが、オタッキーな性格の分、あまりコメディーにならないというか。

まあ、それでも構造としてはトゥームスがこっそりやっている武器取引の現場を目撃したところから、スタークに認められたい一心で独断専行の捜査をするピーターの挫折と成長、というところに絞ったやり方ですね。

お目付役のハッピーがあまりに無能すぎて、こんなのもっと連絡がちゃんとしてたらあっと言う間に片づいてたはずだよね、と思ったり。

一番面白かったのは、ホームカミングパーティーでリズの家に行って、初めて父親がトゥームスだとわかったところ。そこからのピーターの緊張感はいい芝居だったと思います。マイケル・キートンも以前「パシフィック・ハイツ」で見た、サイコパスな悪役の顔が決まってるな、と懐かしく思いました。

ピーターが、スーツの力以外の体力面でどのくらい人間離れしているのか、とかはもう少し説明があると、瓦礫から立ち上がるところとか、技術力に頼らないで自分でやる、みたいなところを前面に出せたような気もしますが、あそこだけ急に泣き言を言い始めるのちょっとびっくりしました。

まあ、話としては、トゥームスの命も助けたけど結局逮捕されて、憧れのリズは転校してしまう。そこで初めて本命の彼女、MJが登場するわけですね。MJも元々引きこもり傾向のあるタイプの女の子として設定したのは、なかなか今どきだなぁ、と思いました。

ラストでは、結局メイおばさんもピーターの正体に気づいた、ということですね。親友ネッドは口が軽そうでいつ秘密を漏らすかヒヤヒヤさせるのが目的の一つでしょうが、結構いいところで助けに来てくれたり、頼りになる相棒感の方が強かったですね。

最後にスパイダーマンがアベンジャーズに加わるための記者会見を本当に用意していたのが無駄になりそう、となって、ペッパーとトニーが婚約会見をする、というところが笑わせました。

全体としては、映像の出来は、合格点だけどMCUの全体の中では平均をちょっと下回りますかね。トゥームスの悪役のアクションがバリエーションに欠けるし、スパイダーマンとしての戦い方もちょっと単調でした。

キャストで気がついたのは、フラッシュ役のトニー・レボロリに見覚えがあって、「レジデント」のデヴォン役のひとかな、と一瞬思ったのですが違って、「グランド・ブダペスト・ホテル」の語り部のボーイ役です。ちょっとストレートに嫌な奴すぎて、しかも笑えるシーンは少なかったですかね。高校の校長先生が、「9-1-1」でチムニー役のケネス・チョイですね。

レンタルのBDで見ましたが、他のマーベルシリーズと違ってメイキングやNG集がついていないのは、ソニーが予算とかに渋いんでしょうかね。