前半と後半で印象が変わって、前半はミステリアスなウェイトレスを巡るちょっとヒッチコック風のスリラー、後半は「ハンニバル」もどきのホラーという感じです。

全編を通じての色使いが「ディック・トレーシー」を思わせる、暗闇と色彩のコントラストが面白かったです。

話としては、駅に迷い込んだ重病の国語教師ビル、そしてフランクリンというフィクサーに雇われた殺し屋を巡る話。冒頭に告解室でフランクリンと取引をするアニー。どうやら深夜カフェでウェイトレスをしているらしい。

ウェイトレスのアニーとの会話しながら病気のことを話すビル。そして、別な時間軸ではそこにやってきて打ち合わせをする二組の殺し屋。

会話が進むうちに、ビルとアニーの隠されていたつながりが見えてきて、これは復讐だったのだ、ということが明かされます。そして途中で疑心暗鬼に陥って仲間割れを起こす殺し屋二人も次々と殺されてゆきます。

最初から誰かが全体をモニターしているな、と思っていたら、それは駅員に化けていろいろと裏工作を行っていたフランクリン本人だったと。

アニーとの会話の巧妙さと謎掛け感に感心しました。微妙にルイス・キャロルの「アリス」をなぞっているな、と思っていたら、最後にひとつ大きな仕掛けを残していました。アニーはトウィードルダムとトウィードルデーのように双子だったのです。

そして、フランクリンの若いころに焼き殺されたのが、二人の母。父親はなにを隠そう、フランクリン自身だったのです。そして、母の仇をとる二人のアニー。

最後のオチはややストレートすぎてあんまり楽しめなかったようにも思います。

あと、フランクリンがずっとモニターで監視していたのなら、アニーが双子に気づかなかったのは迂闊な感じがしますね。香水が変わっていたことで若い殺し屋の方はそれとなく気づいてましたが。

シャロン・テート役で有名なマーゴット・ロビー、綺麗な人ですが、「フォーカス」でウィル・スミスと組んで詐欺師役をやってますね。あと、トーニャ・ハーディング役もやってます。ビル役のサイモン・ペッグがいなかったら、前半はさぞかし退屈な映画になったような気がします。ティム・ロスみたいな存在になってきました。

駅員役のコミカルな演技はマイク・マイヤーズさすがだな、と思ったのですが、後半になって黒幕フランクリンだとわかるとちょっと過剰ぶりに引いてしまう部分がありました。そこまでの人間としての屈折や深みは感じないですね。