一度は見て、大体覚えてたんですが、MCUの一本として位置づけたことがなかったので、腑に落ちないシーンもいくつかあったりして、おさらいと思っていたけど、やっぱり見始めたらノンストップで見てしまいました。
天才的神経外科医、というエリート中のエリート、しかもこの世界にはありがちな高慢さを持ち合わせた人間が、交通事故で肝心の両手の感覚を失ってしまい、リハビリも思うようにいかず、自暴自棄に陥ったときに、奇跡的な回復を見せた患者の症例をみて、訪ねたカトマンズのカマール・タジ。そこで出会ったエンシェント・ワン(ティルダ・スウィントン)の導きと、持ち前の勉強熱心さと記憶力で、どんどん魔術の力をつけていく、という話。
それとは別に、この世界では、先にカマール・タジから禁断の書を奪って去っていった反逆児カエシリウスがいて、暗黒世界と手を結ぼうとしていると。
修行の途中で、もうカエシリウスたちの侵略が始まって、ロンドン・香港・ニューヨークの3拠点のうちロンドンは落ち、ニューヨークも襲われ、エンシェント・ワンも殺され、最後の香港を残った3人の弟子でどう守るか、という話に。
結果的にはストレンジのとんちで永遠のループから逃れるためにドルマンムとの取引を行い、引き換えにカエシリウス一味の魂を持っていかせる、というめでたしめでたし。だけど兄弟子のモルドはエンシェント・ワンが暗黒パワーを使って寿命を長らえていたことが許せずに、悪の道に落ちてゆく、というストーリー。
ストレンジの性格が最初の高慢さからハッキリ変わっていくところというのは、魔術の勉強の過程ではよくわからなかったかな、とか思ったりして、元彼女のクリスティーンとの再会の時の会話で少し匂わせるくらい。事件が矢継ぎ早に起きていくので、精神的な成長とかはすこし駆け足すぎたかも。手術室の霊体抜け出しとかは面白かったですが、クリスティーンとの関係はもう少し見たい感じがしました。
映像的に、ミラー世界の面白さが一番独特で、いろんなアクションや重力の変化を見せて楽しめましたが、案外そういう異常な世界を作っているカエシリウス側の方もこの世界に苦労しているようで、なんのためにやっているのか途中からわからなくなったりしました。最後のバトルも地球上ではちゃんと決着がつかないのでカタストロフィーと逆回転だけ、みたいな。「ファンタスティック・ビースト」で魔法使いたちがノーマジの世界の破壊を「なかったことにする」みたいなデジャヴ感覚はありました。
カエシリウス役のマッツ・ミケルセンは「007カジノ・ロワイヤル」とかでも知られる存在感のある人。今回は目の周り塗られすぎて表情がいま一つわからなかったかも。モルドは先輩だけどダークサイドに落ちる、という心情の奥行きが少し足りない感じ。クリスティーン役のレイチャル・マクアダムスは「シャーロック・ホームズ」でアイリーン・アドラー役をやってますが、コメディータッチが似合う、かわいい女優さんですね。ウォン役のベネディクト・ウォンがコメディー担当としていい味出してます。ティルダ・スウィントンは「コンスタンティン」のガブリエルみたいにこの世のものとは思えない綺麗さと強さ(と悪さ)を併せ持つ人で大好きですが、今回もはまり役でした。