幼いころから関わってきたカルト教団を抜け出した兄弟が、現実世界でもうまくいかずに、ちょっと教団に戻ってみる、という体験をしてみると…。

割にありそうな設定で、また抜けられないカルト教団のぬかるみを描くのかな、と思ったら違いました。

兄にいつもあーしろこうしろと言われて嫌気がさしている弟は教団に里心がついて、少しでも長くいたい。ところが兄の方は元々弟を強引に引きずり出した立場だし、教団の怪しい部分にすぐに気づく。

最初のうちは昔のわだかまりでぎくしゃくしているだけかと思ったら、教団の信奉している中身がちょっと普通じゃないことに気づく。集団自殺を試みているわけではないけど、なにか超常的な力が働いて、こちらを観察しているみたい。

そうしているうちに、兄弟は意見が食い違い、兄だけ出て行くことに、しかし車がガス欠で歩いているうちに変なところに迷い込み、このあたり一帯が不思議なループ空間になっていることを知ります。

ループは、人ごとに周期も違って、とにかく死ぬとまた同じところから繰り返す。まだ死んでいない兄は自由にいろんなループ空間を移動しながら抜け出す方法を探る。一方弟も行方のしれなくなった兄を探そうとするうちに、いくらなんでもこの人たち怪しい、ということに気づきます。

三つ出た月のすべてが満月になった瞬間に、なにかが起きる、ということでキャンプ場に出てみると村人は全員消滅。世界の崩壊が始まる。ガス欠の車を押しがけしながら脱出を試みる兄弟、そこで初めて胸の内を語り合い、わだかまりを解消しながら、脱出に成功する、というのがお話。

兄への不満を抱きながら、それでもそれが兄弟だ、家族だ、と認めることから始まる、という、なんか感動したぞ、という終わり方。ラストで見送る教団の人たちも、実は俺たちのようになるなよ、と脱出する兄弟を温かく見守っているようで、深みのあるプロットでした。

火事の現場とかは明らかにCGだし、特撮はそれほど派手ではないのですが、ループが生じる瞬間とかはどきっとさせてくれたし、「アナイアレイション」ほどには映像的に風呂敷を広げすぎる必要がなかったのが成功の鍵のように見えました。

 

容赦のない空間の法則とか、ループにとらわれた人々の運命とか、描き方が客観描写で、ちょっと2017年の「ツイン・ピークス」のテイストを思い起こしました。


実は、この映画には、監督が同じで、共通の世界観・設定をもった作品が一つあって、原題はResolutionという、2013年の映画なのですが、こちらは日本では公開されていないみたいです。チャンスがあったら見てみたいなと思います。