「世界にパーレただひとり」という絵本があって、やんちゃでわがまま盛りの子がいて、ある日起きるとうるさいママやパパがいない。で、街に出てみるとお店もレストランも空っぽ。いつもできないことがやり放題だ、と大喜びのパーレだけれど…、というお話なのですが、それを思い出しました。

途中で何人かの子どもに出会って、でも相変わらず状況はよくわからなくて、というところから少し冒険めいていくのですが、途中でどうやら彼らの様子が監視されているようだ、というのも「アノン」風に匂わされて、ドローンも時々出没。

途中で警察で手錠をかけられていた黒人の青年を解放してあげると、お礼も言わずにバイクで立ち去る。

さらに、街を出ようとすると、街の周囲を巨大な霧?煙?の塊が取り囲んでいることを知り、さらに、先程助けた黒人の青年がボウガンかなにかで撃たれて倒れている。彼を助けて、ホテルで手当てして…。など。

途中で、集まった子どもたちのバックグラウンドがわかってきたり、それぞれが自分の中に孤独を抱えた存在であることがわかりつつ、少しずつ自分の頑なさを克服して結びつきを見いだす、みたいな話です。

ちょっと展開的には、ありがちで、若者が危機的状況に陥ったときに、どうやって生き残り戦略を立てるか、の基本の筋があんまり説得力なくて、行き当たりばったり感はある。当然観ている立場から疑問に思うようなことを登場人物がスルーしているのは、なかなか厳しいものがありました。

フランス人という国民性なのか、個々のキャラクターの身勝手さは、日本のようにチームとしての統率を重んじるものとは違って、これはこれで新鮮でしたけどね。だけどそれぞれに思っていることが遠回りすぎて伝わらない、というきらいはありました。

で、問題のクライマックス。妹分カミーユがさらわれて、その犯人は、と探すとマンガに出てくるようなナイフマンが犯人か。でも捕まえてみると言葉を話せない障害児のようで、黒幕は別にいると。

その存在をたどっていくうちに、街に来ている移動遊園地がそうらしい。そこにたどり着くと…。

ここからは、「LOST」か「パッセンジャーズ」のノリになってきて、途中で死んだはずのドジも生き返り、でもこれから一緒に死ぬんだ、みたいな、難のために今まで頑張ったのかわからない世界が続きます。

主人公のレイラが真相を知るところのフラッシュバックの感じとかは好きだし、前半の仕込み部分の映像に手がかりがすべて隠されていた、という作りは「サスペリア2」を思わせる見事さ。あとは仕上げの部分だけだったのですが。この展開なら、遊園地の火事の中、子どもたちが協力することで運命を変えて、別パラレルワールドで生き延びる、という展開は勝算があったと思うのですが。

どうも原作コミックのシリーズがあるらしいので、その意味ではバッドエンドにして、続編狙いなのかな、とも思いますが後味は悪いです。天国で讃えられている神様ポジションが、あの嫌なやつ、というのもなかなか神経逆撫でされます。

登場人物の中に、移民、黒人、障害児、そして隔離病棟で闘病中の兄、とかさまざまな今日的なテーマが盛り込まれてると思ったのですが、終盤に障害児のことはみんなが忘れてしまったみたいで、彼だって運命をともにした、犠牲者の一人ではなかったのかな、と、不公平感を感じました。