
この世は昔から光と影に分かれて戦いを繰り広げてきたという前提から始まり、特殊な能力をもって生まれた人間はいずれ光と影のどちらかを選ばねばならない、という運命を持っていると。その中で特に戦闘力が優れているわけでもないけど、予知能力を持っているアントンを中心にしたお話。
影の方の能力者はヴァンパイヤということで、ときどき何の罪もない人が犠牲になったりしているけれど、全面戦争には至っていない。ただ、時々小競り合いが生まれると。その中である少年の存在が鍵になっていき、その少年は12年前にアントンがこの世界に入るきっかけとなった堕胎のクロ魔術に関係があり、実はアントンの実子であることがわかると。
しかもアントンはなにをとち狂ったか、その息子を殺そうとしたことがきっかけで息子は影の側を選んでしまう、というバッドエンディング。この辺の細かい心情がいま一つ伝わってこなかったのは残念。
あと、途中で台風が発生して、その原因が呪われた女性医師だと。で調べているうちにその原因にたどり着く、というサイドストーリーがあるのだけど、どうも腑に落ちない。
その他の能力者の働きぶりとか、途中でアントンの相棒になるフクロウのオルガとか、どうもキャラクターの棲み分けに魅力が感じられないので、ただアントンのオロオロぶりだけが際立ってしまいました。
最後の最後に悪役のザヴロンが全部を仕掛けていた、と分かり、アントンの息子がこの善悪の対決を決する決定的な能力者だということで、次に続くんでしょうが、ちょっとスター・ウォーズとマトリックスのモチーフに被りすぎて、それほどオリジナルな物語にはなっていないかなと。
ロシアでは小説が先に大ヒットしたみたいなんで、それはそれでいいんですが。