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少し理屈っぽいかなぁ、とか食わず嫌いで見てなかったのですが、やはり見てよかった、と思った一本です。

原題がThe Postであることからも、名門New York Timesに遅れをとり続けて、前時代的な家族経営のローカル新聞紙だったザ・ポストがマクナマラの指示で作成されたベトナム戦争の分析書類ペンタゴン・ペーパーズのコピーを入手したことから始まる、社内での葛藤を中心に描いています。

いつも鬼女を演じているメリル・ストリープがここでは誰からも馬鹿にされる、棚ぼたでなった社主を演じていて、最初は「あれ?」と思うのですが、これこそが最大の魅力。これはスーパー・ジャーナリストの権力との戦いの物語ではないのです。

むしろ、一般市民とおなじような感覚で、政治家とも簡単に食事してしまうような前時代的な感覚の社主が、報道があるべき姿になるために、何をしないといけないか、見つけ出し、自らの運命を賭して決断を下していく物語。

これを見た日本のマスコミのお偉いさんは、彼女と同じ決断をまだ下せないでいる自分たちをどう思うのか。そして、われわれ市民は、このレベルのマスコミに踊らされている自分たちをどう思うか。70年代初頭にこの事件が起きていることを考えたら、いまだに菅官房長官の言いなりになっている記者クラブは、40年の遅れをとっているわけですね。

セットの色使いや小道具なども当時の空気感をよく再現していて、「大統領の陰謀」と同じ時代に撮影した、と言われても信じてしまいそう。まあ、「フォレスト・ガンプ」を作れるんだから、このくらいはお手の物でしょうか。

トム・ハンクスがいい感じのじじいになってきたな、と思ったり、マクナマラを演じたのがエド・ハリスだとずっと思い込んでいたらブルース・グリーンウッドだったりしましたが、サラ・ポールソンが「ミスター・ガラス」とは違った魅力的な奥さん役で、見直してしまいました。