
敵と味方に分かれて勝負がつくまで存分にバトルする、というのとは違って、特に真ん中あたりまで、理屈っぽい展開が続きます。なんでこの精神科医にこんな権限があるんだろう、とかこんな管理の仕方でうまくいくわけがないとか、愚かな凡人のおかげで大惨事が起きていくパターンかな、と思ったらそうではなく、隔離され、差別された超人たちがコミック世界の代表選手として、人類の可能性を広げる存在である、という讃歌だったのですね。
そして、彼らの存在を否定したい一派の人々がいて、その代表が精神科医だったと。コミック本世界と現実をどう結びつけるか、というかなりメタなお話。
そして本編が終わってみると、主要な超人たちが軒並み討ち死にというまさかの展開。しかしそれによって敵味方に見えた超人たちの係累たちはみな団結し、その真実が世界に広まるのを見届ける、新しい世代の始まり、という希望をもった終わり方。こんなやり方があるなんて!
アニヤ・テイラー=ジョイが前よりも人っぽくなって、やさしさや心のふれあいをもたらす存在として。デヴィッド・ダンの息子ジョセフは「アンブレイカブル」の子役以来の再登場で父親を助けようとする青年として帰還を果たしています。メイキングを見るとみんな長くシャマラン監督を支え続けてきたスタッフや、かつて先輩だった人たちのこども世代に受け継がれているようで、みんなが現場を愛する監督というのは、やはりいいなと思いました。
フィラデルフィアを中心にとり続けて、「実質的なフィラデルフィア市長」とか呼ばれちゃうの、なんかうらやましいですね。
「ビースト」の変容ぶりが、昼日中の明かりで見ると、それほど迫力がなかったり、戦闘シーンがちょっと地味だったりするのは、いまのマーベル路線とは一線を画す、という覚悟のやり方なんでしょうね。サミュエル・L・ジャクソンも、もういい歳のはずなのに、永遠のこどもみたいなミスター・グラスを若々しく演じていました。悪役のように見えたけれども、結局彼がヒーロー世界を構想したというわけなんですね。ある意味では大量殺人者なので、ちょっと複雑な気持ちにもなりました。