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朝目覚めると記憶を失っている女性の物語、というとそのままですが、見る側も彼女のおかれた立場を認識しながら、現実世界を把握していく、という構造なのでストレスは少ないですね。

「メメント」だと、それを逆回転に世界を認識していくプロセスがあるので、ちょっと複雑になりすぎたきらいがあったのが、こちらでは素直に全体像が見えてきます。

彼女が記憶を失った経緯や、いたはずの息子の消息など、少し「フォーガットン」を思わせるところもありますが、そこまであり得ない話ではなく、精神科医の勧めによって行った、ビデオカメラに毎日の記憶を記録することで、だんだん記憶をたどる旅が短くなっていく、という仕掛けになっています。

途中から、あれあれ?と思う部分もあって、カメラのことを告白されてもベンはクリスティーンを殴るだけで、それ以外に隠蔽工作を行おうとしないこと。ラストに彼女をホテルに連れて行って何がしたかったのか、よくわからない。

一番大きな仕掛けとしては、ベンがすり変わっていたことと、息子アダムが死んではいなかったこと。この辺がわかってくるとちょっとおお、と思ったりします。

まあ、犯人側からすると、こんな大がかりなことをして得られる報酬はなんなんだろう、という気もしますけどね。犯行を隠し通すこと、は彼女を放置しても可能だったろうし、彼女を騙し続けるための家や証拠写真など、捏造しなきゃならない小道具多すぎませんかね。

あと、彼女の振る舞いが日々変わっていくのが、ベンの方からは丸わかりだったんじゃないか、と思ったりします。

ニコール・キッドマンが、すっぴんに近い年齢相応の表情をさらして、気迫の演技。コリン・ファースはある時まで穏やかで急に暴力的になるベン(マイク)を巧妙に演じて、ギリギリまで善悪ばれない好演。マーク・ストロングは、「記憶探偵と鍵のかかった少女」の時の役柄そのままな感じで、理性的だけれども、ちょっと情に流されかかる精神科医。まあ、彼がもっと鋭ければ、ベンの正体にもっと早く気づくはずだったんじゃないか、と思ったりしますが。

「リピーテッド」というタイトルからは、少し「恋はデジャ・ブ」のような展開を思わせるのですが、原題はちゃんと意味が通ってますね。