
話の最後に誰が本当の囚人だったのか、問いかける重い話です。
「大脱走」のようなある種の正義と悪の対決などでは描ききれない、イングランドとアイルランドの戦い。ハンガーストライキで10人の死者を出したIRAの囚人の生き残りが、プライドをかけて脱走を試みます。
そのためになんとしても必要なのがとらわれている監獄についての情報と、警備態勢のスキ。床掃除の仕事に志願することでゴードンという看守と接近していく、その間にはゴードンを狙う外部からの試みや、一家の離散という事情も関わって…。
主演のトム・ヴォーン=ローラーは、ちょっとロベルト・ベニーニに似てますかね。「アェンジャーズ」と「ローズの秘密の頁」でも見ているはずなんですが、すぐにあの役、とは思い出しませんでした。
見ている側も、できる限り犠牲者を出さずにスマートに脱獄したい主人公と、少しずつ、心理的な距離を近づけていくゴードンとのどちらにも感情移入しながら、決行の日の意外な偶然に左右されてドキドキしたりしました。
ラストに囚人たちの結末とアイルランド紛争の行く末がテロップで表示されて、本当にこの争いそのものの迷宮ぶりが感じられたと思います。