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人類が宇宙ステーションごと宇宙に飛び出していろんな文明と出会ってしばらく経ってからのお話、という壮大なスケールの物語なんですが、話が進むにつれてどんどん身近でスケールの小さい話になっていく、という不思議なテイスト。

ヴァレリアンは有能だけど超人的な能力も知恵もなくて、ちょっとどじで女の子にルーズなキャラクター。相方のローレリーヌにほれていて、前半でプロポーズしたりするんですが、それが本気なんだか、ローレリーヌもどう思ってるんだかわからない、というのが全体を通す縦軸に、という思惑なんでしょうが、行動には相思相愛なのが丸わかりなんで、ちょっとじれったいというか。

だって出会ったばかりじゃなくて、もうコンビを組んでそこそこの時間が経っているし、お互いけっこうでれでれしてるのに、本気でどこにほれてるのか、ちょっと見えてこない。

途中でヴァレリアンが行方不明になってローレリーヌが単身で探して、次はローレリーヌが行方不明になってヴァレリアンが救出に行く、という二度手間なことをしないといけなかったでしょうかね。

そうこうしているうちに、メインの話としてはヴァレリアンが夢で他の惑星のことを見ていたり、宇宙ステーションの中心部に放射線汚染があって、それを何とかしないと1週間で滅亡だとか急に深刻な話になって、でもその途中で司令官がさらわれて、さて真相は?ということで。

最初から司令官がすごく怪しい。調べていくと思った通り、惑星の殲滅に一役買っていて、その証拠を隠滅するために、今回の宇宙ステーションの放射線騒ぎもでっち上げていたという、そうとうたちが悪い。どうして、これがもっと早くにもれなかったのか、人類は何世紀経っても、ぜんぜんダメなんですね。

途中でリアンナがなんにでも変身できる軟体生物バブル役として出演したり、その主人役でイーサン・ホークが出ていたり、海賊船船長の声をジョン・グッドマンが演じたり、冒頭の宇宙政府の代表をルトガー・ハウアーがやってたり、やっぱりリュック・ベッソンの作品にはみんなが関わりたいと思うんですね。

一昔前のゲームのシナリオ部分みたいに派手なドンパチの合成があったり、宇宙ステーションの世界が多様でカラフルだったり、いろいろと一気に見れてしまうエンターテイメントになっていると思います。ある意味、ちょっと未来の世界の「スター・ウォーズ」なんだな、という感じがしますが、ちょっと中心になる謎がショボいのは残念でした。

ヴァレリアン役のデイン・デハーンが少し人相の悪いマイケル・J・フォックス、という感じで、この世界での有能さが少し足りないような気がしました。ローレリーヌ役のカーラ・デルヴィーニュは、かわいくていいと思いましたが、少し幼く見えすぎかも、と思う瞬間も。

一番の山場は、「変換器」である最後の一匹を渡すかどうかでヴァレリアンとローレリーヌが口論するところだ、というのはちょっと意表をついていましたが、「おれは兵士だ」を覆すローレリーヌのロジックはあれでよかったんですかね。簡単にひっくり返されるヴァレリアンのロジックの弱さよ。

でも「フィフス・エレメント」同様、人類が一番愚かで、多様性に対する不寛容、多民族への傲慢さは相変わらず、というのが監督のメッセージなんじゃないでしょうか。