イメージ 1

逃亡中の女スパイの写真をたまたま公園で撮っただけで、逃亡劇に巻き込まれたカメラマンの物語、逆に、逃亡中にたまたま自分の写真を撮ったカメラマンを見殺しにできずに、彼を連れて逃げることにする女スパイの物語、と二つの面から見えるので、ひたすら逃げるだけ、の劇が意外に味わい深く見えたりします。

音の仕込みが丁寧だからなのか、不安に思うべきところは不安に感じるし、予感をするべきところは見る側が準備できる、という部分があって、いわゆる不意打ちのホラー的な見方ではなく、心理サスペンスとして作られていると思います。

ちょっとカメラマン・ホリス役の人が情けなさが前面に出すぎて、ずっとヘタレでいつまでも事態を受け入れられずにぐだぐだ言っているのがイライラの原因だったり、スパイ・ナタリーの説明があまりにぶっきらぼうでホリスのマネジメントとしてもいまいちに思えるので、そこが前半の難点ではあります。

車の中で少し会話が始まったり、互いの本音が少し交わせるようになってきてからは、チグハグコンビの道中ものとして見られるようになってきて、フェニックスについたから安全か、と思ったら元仕事相手のロドニーの家にたどり着いても全然落ち着かない感じとか、ヒリヒリしながら見る感じがあります。

最後の決闘が、相手側のコロンビア・マフィアの完全な作戦負け、という感じで一方的なのですが、ホリスの素人としてのハンデがあって、彼の側から描かれるので、そこそこドキドキしたりして、まあ緊張感をもって見られたかな、と思います。

相手がその気になれば人殺しもする人間だと知っていても、いざ殺人の現場を見れば嫌悪感を抱くし、自分の命を守るためとは言え、人を殺してしまったら、もう自分は過去の自分には戻れない。最後のホリスの慟哭は、そんな真実をはらんでいるように思います。

原題NEGATIVEは、ホリスが撮影してしまった写真のネガ、という意味と、道中でナタリーがホリスに「ポジティブに考えなきゃ」とアドバイスしたことへのリアクションから来ているのでしょうね。

ナタリー役カティア・ウィンターは、スウェーデン生まれで早くからイギリスに移住して、テレビを中心に活躍していましたが、「デクスター」「スリーピー・ホロウ」などの米テレビシリーズで知名度をあげたようです。ホリス役サイモン・ウォーターマンもイギリステレビ中心の人ですが、テレビシリーズ「ウェストワールド」ではメインレギュラーも勤めているようです。ロドニー役のセバスチャン・ロッシェは映画では「ベオウルフ」くらいしか有名な作品はないですが、テレビでは数知れない有名シリーズで、一癖ある役をたくさんやっています。