
SFのようでいて、実はイギリスの若者の心情をめぐるドキュメントのように見える不思議な1本です。
看護師のサムをカツアゲした団地の若者5人の強盗団。そばの車に落下してきたものはと見てみるとエイリアンだったと。それに引っかかれたボスのモーゼスは怒ってそのエイリアンを殺してしまいます。
その正体を探りにアパートの中のマリファナ商人のところに行ったりしているうちに、別なエイリアンに襲われ始め、さらには麻薬商人にも逆恨みされて狙われるように。
そして、いつのまにかエイリアンはモーゼスたちの逃げる場所を執拗に追ってくるようになり、その理由は…?という引っ張り方。
序盤、若者たちの悪さや、途中の判断力のなさ、視野の狭い行動の浅はかさみたいなものが鼻について、ちょっと共感できない、と思うのですが…。
ご近所のワルだから、警察も頼れない、本当のことを言っても信じてもらえない、冤罪を着せられて有罪に決まっている、という諦めがこの若者たちのひねくれた行動の背景にある、とわかってから同情できるようになってきます。
そう、これはSFの名前は借りていますが、最後の「モーゼス!モーゼス!」という熱狂の様な呼び声を呼び覚ます、現代版「十戒」なのです。
辺り構わず花火が飛び交う、「ガイ・フォークス・デイ」という、イギリス独特の記念日に当てて事件を起こすあたりが非常にイギリス的です。若者言葉づかいで「believe!」(マジだよ!信じろよ!)という言い回しが新鮮、これも「信じるものは救われる」からなんだと思います。
サム役のジョディ・ウィッテカー、どこかで見たような気がするんですが、キルステン・ダンストをもう少し田舎風にしたような親しみやすいヒロインですね。モーゼス役のジョン・ボイエガは、この作品の後、「スター・ウォーズ」新シリーズ、「パシフィック・リム:アップライジング」と、いまをときめくスターになっています。ロン役のニック・フロストは、「ホット・ファズ」「スノーホワイト」シリーズなど、そこそこ活躍しています。