
「ラディウス」とは、一般的には「半径」の意。一定の距離以内に近づいた者が死んでしまうなんて、なんと恐ろしい。
序盤の登場人物の振る舞いを別にすれば、なかなか巧妙な設定と人物の心理描写で見せる、上質なスリラーだったかな、と思います。部分的にはSFですが、その中身は非常に濃密な記憶喪失ものの人間ドラマでした。
車の事故の後に意識を取り戻した記憶喪失の男。しかし彼が関わる人間はすべて死んでいる。なぜ?というところから物語が始まります。
そして、人を避けて生きようとしているところに、なぜか彼の近くにきても死なない女性が。彼女も記憶を失っている。
そこからは、警察にも追われつつ、二人の記憶が少しずつ戻るところが中心に展開。
まあ、もう少し電話なりをうまく使って、状況を説明すれば、この悲惨な死のループから抜け出す方法は考えつきそうなものですが、そうすると話が進まないですね。
終盤の二人の皮肉な正体と、ハッピーエンドを許さない悲惨な別れ、というのがなるほどな、とうならせました。結局原因はわからずじまい、というのもハリウッド製とは違った、カナダ映画ならではの味わいでした。
ラスト、リアムは記憶が戻ったからにはもはや自分を許すことはできない。ジェーンも決して今のリアムが憎いわけではないけれども、決してその過去の罪を許すことはできない、終わり方はこうするしかなかったんでしょうね。
役者さんたちは、ほぼ無名と言っていいでしょうか。リアム役だけは「パシフィック・リム」「キューブ・ゼロ」に出ていて、少しヒュー・ジャックマンに似たところもあって、犯罪者もこなせるワイルドな風貌をしていますが、他は日本で知られているような出演作はないようです。