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全体を通して不思議なテイストだなと思うのは、ロシアのスパイがずっとフランス語でしゃべっていることなのですが、実はロシアって、フランスにずっと憧れていたようなところがあるので、それはそれでリアリティーがあるのかな、なんて途中から思いました。

アリスの投資アナリストとしての有能さやある種の残忍さを前半で売った上で、彼女を操っているつもりのFSBのチームがアプローチして、彼女を利用しているつもりになるところまでは、なんとなく納得していたのですが、グレゴリー(モイズ)が彼女をチラチラ見つめて顔バレするのが、そもそもスパイとして無能の証では?というのは大きな疑惑。顔だちは甘いし、ロシア版ジェームズ・ボンドと思えばいいんですかね。

ロストフスキーがティム・ロスというのはなかなかのご愛嬌で、ロシア語もフランス語も一生懸命こなすあたりが彼らしいですが、いつまでも騙されすぎじゃないの、とか思ったりしました。

アリスはアリスで、前半のクールさとうってかわってモイズとのデートにうつつを抜かす恋する女に変貌するわけですが、その上でしたたかにCIAのためにも働いているので、結果的にはグレゴリーをしっかり出し抜いて、勝負には完勝。そのことがグレゴリーを傷つけたことをきっと悔やんだんでしょうね。

イギリスに亡命したロストフスキーがアリスに復讐することで、ラストのメロドラマが展開する、というのが後味の悪さを救ってはいます。抱きしめられたから思い出したのではなくて、セリフにもあった、「たくましい腕の感触」によって呼び覚まされた記憶、というのが正しい理解のように思います。