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「クロニクル」というタイトルは、映像全体がなんらかの媒体に記録されたものである、という意味合いが強いのかなと思います。普通なら「年代記」と訳すようなところですが、「時系列」みたいな感覚で使ってるんでしょうかね。

アンドリューという、特に取り柄もなくて、母親は病気、父親は事故が原因で引退した消防士で昼から飲んだくれて息子に当たるような男。そんな家庭でコンプレックスを抱えて生きてきた少年が、初めてムービーカメラを手に入れてすべてを記録しはじめる。ここまではなんでもない日常なのですが、従兄弟マットと優等生スティーブと一緒に洞窟探検をしたところから、超常的な力を手に入れていきます。

基本はテレキネシスで、物体を思いのままに動かせる、という能力だけだと思いますが、初めはすぐに鼻血を出してしまっていたのが、次第に能力の範囲や力を強めていきます。

青春にまつわるいろいろなコンプレックスや家庭の問題から、アンドリューがこの力を暴走させていき、次第に悲劇の色彩を帯びていく、というのが脚本のうまさだと思います。自撮り映像、という縛りがなければ、だいぶ平凡なものになったかもしれませんが、なんでも撮らないと気が済まないし、やめろと言われてもやめられない、オタッキーで頑固な気質、というところにアンドリューの気質がうまくミックスされていると思います。

初めは世間から隠そうとか、人には危害を加えないように、とか自分たちで設定したルールで能力の自主管理を試みていたのですが、高校のイベントでナンパに失敗したことから、アンドリューの自閉的気質が悪化、母親の病気の悪化と父親との関係の険悪化などが相乗効果で自暴自棄な境地に達していき、あとは必然的な破局へと向かいます。最後の方の特撮効果はなかなか見物です。

ちょっとヨーロッパ的な香りがするのは、SFの仕立てではあるけれども、彼らが身につけた超能力の根拠や理由については一切ロジカルな説明をしようとしていないこと。途中でマットが度々哲学のセリフを引用したり、そこからアンドリューが自分の能力を正当化するために我田引水な哲学理論をこしらえたりするあたり、SFよりは寓話に近いのかもしれません。

脚本のマックス・ランディスは監督ジョン・ランディスの息子で、これが映画脚本としてはデビュー作、他に「バッド・バディ」もあるから、ユニークな作品に爪痕を残すタイプなんでしょうかね。ホラー版の青春物が「キャリー」だとしたら、SF版青春物、というジャンルがこの「クロニクル」と言えるかもしれません。この男子3人の友情物語、あるいはアンドリューのドツボ具合になんらかの共感ができる人には楽しめる作品じゃないでしょうか。