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レクター博士が出てくる、という事情を知らなければ借りることはなかったかもしれない映画ですが、本作のみで成立するように作ってある、という意味では掘り出し物のスリラーと言えるかもしれません。

レクター博士をつかまえたけど精神的に病んでしまった刑事が、模倣犯が現れたのをきっかけに現役復帰して、次の殺人を阻止する、というプロット。

映像や演出は、ちゃんと映画っぽくなっているというか、テレビドラマの拡大版みたいなチープさはなく、サスペンスとしてはもっています。途中で犯人をばらさないと終盤のドキドキ感がなく、「え、知らないやつが犯人だったの?」になってしまうのでしょうが、急に「こいつ犯人です」と教えられてしまうのにはびっくりしました。新聞記者がああいう風に付け入ってくる、というのは想像がつくので、捜査チームに入るならばそれなりの隠れ方や情報操作のやり方があるだろうに、表玄関を堂々と歩いたり、グラハム刑事危機感がなさすぎじゃないかなと思いました。

グラハム刑事の精神状態が怪しい、というのが一番のハラハラポイントで、犯人の心理に入り込む主観的な捜査手法は「ミレニアム」のフランク・ブラック刑事ほど特殊ではなく、かといってあまり確信に満ちたものでもないので、危なっかしいなぁ、という感じがしてしまいました。

ちなみに彼を復帰させたジャック・クローフォード役のデニス・ファリナは「ミッドナイト・ラン」でマフィアのボス役をやった人なので、刑事役をやっているのが見ていて違和感があるというか、どうしても心の暖かい人物には見えないのが個人的に損しました。

音楽がSFホラー的で、「サスペリア」のゴブリンとか「ブレードランナー」のヴァンゲリスを思わせるサウンド。シンセの低弦がブーンと鳴ると、怪しいシーン来るぞ、とハッキリした予兆になるのがこの時代の作り方ですね。

目の見えないリーバ・マクレーンが、現像所の仕事をする、というのがどういうリアリティーがあるのかよくわかりませんが、一瞬だけ犯人のフランシスが心を許して人間に戻りかける瞬間があるのがいいひねりになっていました。