
ベン・アフレックが脚本も監督もしていたとエンドクレジットで知りましたが、そんな素人臭いような物ではなく、壮大な叙事詩としてできていると思いました。
ちょっと序盤の自分語りの部分で、しょせん無茶を承知でやっているチンピラだから、結果がどうなったって自業自得、何も期待するものかないや、と感じさせたり、マフィアの出先機関のボスとしての仕事が軌道に乗るまでがスムーズすぎる、とかいろいろあるんですが。あと、マフィア物の王道は、最初は純情だった人間が、最後は組織のしがらみで抜けられなくなって、避けられない運命に突き進むという悲劇なんですが、この話の場合は最初に捨て鉢なチンピラが、次第に人格者になっていく、という逆コースをたどるのが特徴的ですかね。
途中で出会ったキューバ出身の彼女と熱愛したり、仕事の邪魔をしに入ったKKKとの抗争で相手をボコボコにしたり、仕事を取り上げようとしたマフィアのボスとかつての仇敵は返り討ちにしちゃったり、順風満帆すぎる、といえなくもないでしょうかね。
ただ一つ、ロレッタという少女にだけは手出しができずにカジノの経営に失敗するとか、マフィアとしては甘ちゃんというのもできすぎかもしれませんが、こういう時代物の空気とか、当時生きていた人の肌感覚がどういうものだったのか、という意味ではなかなかの物で、「ゴッドファーザー」の仕上がりには及ばなくても「グッドフェローズ」並みには見せたかなと思います。
史実に基づく部分がどのくらいあったのかは知りませんが、禁酒法やカジノをめぐる世論の動きなどは多少リアルにリサーチしたんでしょうかね。
序盤で裏切ったホワイトの情婦エマが最後にちらっとだけ現れて「今は自由だ」というのに対して「自由はいらない」と返すジョー。最後のセリフはロレッタが語った「いま、ここが天国」。少しきれいにまとめすぎたかもしれません。