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タイトルは「アウトロー」ですが、原題はJack Reacher、シリーズ二作目がまた「ジャック・リーチャー」なので、ちょっとややこしい感じはします。アウトローって、ちょっとならず者的なイメージがあって、どちらかというとピカレスクロマンを連想するのですが、どっちかというと主人公は法律の側。弁護士のアシストを得ながら正義を行うので、あんまりアウトローっぽくはありません。

トム・クルーズが出ているとはいえ、あまり最近風のアクションスリラーではありませんでした。どちらかというと、ヒッチコックみたいな上品な作風ともいえるでしょうか。あまり血なまぐさくはなく、見た目がグロい感じでもなく。

序盤でものすごい遠距離から5人の男女が狙撃され、その犯人と目された元軍人が逮捕される。しかしその軍人は刑務所で囚人同士のいざこざに巻き込まれ意識不明になる、というところで、かつての彼の犯罪を見抜いたジャック・リーチャーという男が訪ねてくる、という導入。

リーチャーが謎めいた存在である、ということは冒頭からだいぶ宣伝されるのですが、彼の能力がなんであるのか、というのはあまり明らかにされず、単独行動ばかりとるので、けんかには自信があるようなのだけど、それ以外の推理力については、理屈っぽくはあるけど、どうなんだろうと。しかも途中で頭の悪そうなチンピラにはバットで頭殴られてるし、パシリの女の子はみすみす殺されてるし。

弁護士ヘレン役のムザムンド・パイクは、品があって、表情だけでいく通りもの表現ができるいい女優さんだな、と思いました。メイキングでわかったのですが、地のしゃべりはものすごいイギリス人アクセントでしゃべるのですね。彼女の存在感が、ヒッチコックっぽさをかもしだしている、というか、どこか浮世離れした犯罪の大げさな感じを救っているとも言えるでしょうね。

ロバート・デュバルが登場したのは後半で、おいしいところをずいぶん持っていきました。出会いのシーンでリーチャーが最初は偽名を名乗っているのに、途中で急にリーチャー呼ばわりするのはなにかの間違いでしょうか。

犯罪のトリック自体は割にちゃちで、スケールもあまり大きくならないので、悪役のシベリア帰りの凄味といま一つ結びつかないとか、共犯の狙撃手と悪徳刑事の動機も解明されないまま。

ジャック・リーチャー自身も、法に則って悪を裁く、ということには興味のない人なんだ、と最後でわかりましたが、なんかちょっと大雑把な感じもしました。でもそのおおらかさが、ちょっと懐かしい感じもします。