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実は「鋼鉄ジーグ」の原作の方をほとんど知らないので、どのくらい設定を引用しているのかわからないのですが、イタリアでは日本のアニメはずいぶん吹き替えて放送されているのは知っています。相当好きな人がオマージュとして作ったのだと思いますが、イタリアのアカデミー賞に当たる賞を総なめした作品のようです。

確かに設定的に荒っぽい部分はありますが、主人公エンツォの心情の変化、アレッシアのかわいらしさ、敵役ジンガロの分かりやすい憎たらしさなど相まって、骨太なヒーロー成長物語に仕上がっていると思います。

最初はただのこそ泥として逃げていたときに水中の放射性物質に触れたことがきっかけで超人的な体力をつけて、やくざの下っぱセルジォについていった麻薬の回収仕事が失敗したことからその能力に気づく。セルジォの娘アレッシアは母親を失って以来現実と妄想が入り乱れた振る舞いをしていて、最初は足手まといに思っていたエンツォが次第に彼女の魅力に目覚めていく、というのが丁寧に描かれます。遊園地の観覧車のシーンなんて、ヒーロー物で滅多に見ることのない名場面じゃないかなと。

その間もATMを丸ごと引き抜いたり、現金輸送車を襲ったりと、もっぱらお金目当ての犯罪には手を染めているわけで、段々部屋のテレビがプロジェクターになったり、冷蔵庫の中身が埋まったり、鋼鉄ジーグのボックスセットを手に入れたりと、分かりやすい充実ぶり。一方、ジンガロはどんどん暴走を繰り広げ、金回りが悪化してどんどんドツボに。そこでアレッシアを人質に取って超人的な力の秘密をエンツォから引き出そうとします。

ここでアレッシアが死んでしまったところで終わりかな、と思ったらジンガロもまさかの超人化、そしてちょっとした人助けがきっかけで、アレッシアの遺志でもある人助けに目覚めるあたりがとっても胸アツの展開。

実は、全然鋼鉄ジーグの設定を使わなくても力のある物語になったと思うのですが、アレッシアの妄想があることで、よりハートウォーミングなSFファンタジーに仕上がったんだと思います。