
実は「JKコンビニ・ウォーズ」を見たあとにその〝前日譚〟があるらしいと知って借りて見たので、こういう作品だとは思ってませんでした。
実に巧妙なストーリーテリングでありえないような展開に主人公が巻き込まれていく、という物語。ポッドキャストでとにかく過激なネタを仕入れるためにカナダにわたった主人公が、トイレの張り紙の内容を真に受けて、一人で住む老人の家を訪れると、そこで監禁され、身の毛もよだつ人体実験を受け、セイウチに変身させられてしまう。その動機は?彼の恋人と友達は彼を助けることができるのか?
途中でコンビニに次回作の主役の二人が出てきたり、探偵役としてギー・ラポワント(クレジット上は誰だか明かされてません)が登場して、この事件が今回だけ起きた単独の出来事ではないとわかるのですが…。
結果的に、解決の方法はいわゆるリアリティー追求型ではなく、寓話的な終わり方になり、別に1年後、としなくてもよかったんじゃないかなぁ、と思ったりしましたが。
狂人のように振る舞えば、すなわち狂人なり、というようなことを吉田兼好が「徒然草」に書いているのですが、それに似たことで、セイウチのように振る舞えば、中身もセイウチになるのだろうか。一度なってしまうと二度と戻れない一線というのもあるのだろうか。いや、彼はそうなる前からセイウチだったのではないか、といろいろと考えてしまいます。
江戸川乱歩の小説に「芋虫」という手足や言葉を失った傷痍軍人の話があるのですが、このエッセンスからエロを抜いたら、こんな映画になったかもしれません。
特典で、監督ケヴィン・スミスのインタビューがあるのですが、映画人としてのキャリアを振り返るもので、インディーズ出身としての矜恃を語っている、内容の濃いものでした。